オアシス - 90点 ◎

炙り出される偏見と差別意識。茫然自失の衝撃作。

世界的に評価された「ペパーミント・キャンディー」のイ・チャンドン監督が、社会から疎外された男女の愛を描く。本作で肉体的・精神的に辛い役を演じたヒロインのムン・ソリは、ベネチア国際映画祭新人俳優賞を獲得し、イ・チャンドンも最優秀監督賞を受賞することになる。

前科三犯の男・ジョンドゥ(ソル・ギョング)は、出所後に謝罪に赴いた被害者の家で、重度脳性麻痺のコンジュ(ムン・ソリ)と出会う。本能に従って愛を求めたジョンドゥをコンジュは受け入れ、2人は秘かに愛を育んでいくが、親兄弟や周りの人間は2人の愛を許さなかった・・・。

”目が見えない”人物や、”口がきけない”人物を描いた物語は日本にもたくさんありますが、今作に登場するヒロイン・コンジュ(ムン・ソリ)は四肢が麻痺しており、一人では外を歩くこともできないという重度の脳性麻痺。そんなコンジュが社会性を欠いた男(説明はされないが明らかに知的障碍者)と出会い、恋に落ちる。

コンジュは、顔や手足が常に強張っているため、言葉が上手く喋れないどころか、表情やジェスチャーもままならない。こちらの投げかけにリアクションは返すが、喜んでいるのか怒っているのか全然わからない。そんな、コミュニケーション能力が極端に低い人間です。しかし、ジョンドゥはそんな彼女を普通の女性の様に扱い、外へ連れ出し、一緒に遊び、そして愛を交わす。

誤解を怖れずに言えば、”普通に生活してきた健常者”であれば、この二人の強烈な恋愛描写にショックを受けない人はいないと思います。何か恐ろしい気分さえしてくる。しかし、この映画は、そういう衝撃をリアリスティックに描くだけという単純なアプローチには留まらず。突如としてファンタジックな手法を用い、観客の誰もが理解できるようなカタチで二人の幸せを表現していきます。それは”コンジュの空想”であると同時に”ジョンドゥから見えているコンジュの姿”として提示され、実は私が隠し持っていた”ある意識”を炙り出します。

そうなんです、私が最初に感じた衝撃の震源地は、簡単に言ってしまえば”偏見や差別”だったんですね。障碍者の人生に対する想像力の欠如。未知なるものが突然眼前に現れる衝撃と恐怖。この脳天を金属バットでガツン!と殴られたようなショックと共に訪れるアウェアネス。これを受け入れ、飲み込めるかどうかがこの映画への評価の分かれ道だと思います。そして受け入れられた観客は次第に感情移入し、二人の幸せを願うような気持ちになっていくのですが・・・。

ということで、ここから先はぜひ実際に観ていただきたいと思います。この難しいテーマを、偽善的な美談や、悪趣味な露悪ではない絶妙のバランスに仕上げたイ・チャンドン監督と、主演の二人にはどんな称賛の言葉を送っても足りません。映画「オアシス」は、そんじょそこらの作品にはない、凄味のある感動を与えてくれる映画です。

「オアシス」
公開:2004年2月7日(土)
監督:イ・チャンドン
脚本:イ・チャンドン
出演:ソル・ギョング、ムン・ソリ、アン・ネサン、リュ・スンファン、ソン・ビョンホ、チュ・グィジョン、ユン・ガヒョン、パク・ミョンシン
上映時間:132分

トランスポーター3 アンリミテッド - 58点 ◯

シリーズファンを裏切らない仕上がり。

ジェイソン・ステイサム主演の人気シリーズ「トランスポーター」の第3弾。運び屋のフランク・マーティン(ジェイソン・ステイサム)は依頼主のジョンソン(ロバート・ネッパー)に車から20メートル離れると爆破する装置の付いたブレスレットをはめられ、謎の美女、ヴァレンティーナ(ナターシャ・ルドコワ)とともにドイツを目指す。しかし、この依頼には有毒廃棄物を扱う国際廃棄物管理会社の巨大な陰謀が隠されていた・・・。

「完璧に仕事をこなす世界一の運び屋」というわりには雑な仕事ぶりが憎めないステイサム兄貴ですが、今作も眉間にシワがグッと寄っていてカッコイイっス。やや微妙感が漂うシャツを使った格闘シーンとか最高ですし、このシリーズの真骨頂であるカーアクションもハデで大変よろしい!こういう痛快なアクション映画はどんどん作ってほしいです!ちなみに今回のヒロイン役はリュック・ベッソンがナンパした美容師のネーちゃんだそうです。まったく公私混同はなはだしいですね。可愛いからイイけど(笑)

「トランスポーター3 アンリミテッド」
公開:2009年8月15日
配給:アスミック・エース
監督:オリヴィエ・メガトン
脚本:リュック・ベッソン
出演:ジェイソン・ステイサム、ロバート・ネッパー、ナタリア・ルダコーワ
上映時間:104分

20世紀少年 第1章 終わりの始まり - 20点 ✕

ネタが完全に賞味期限切れ。

この第一章は、己の青春が不発(≒ロックによる革命が失敗)に終わったおっさんが、自作自演のハルマゲドンに立ち向かうことを決意する話ですが、「ロック革命」も「ハルマゲドン幻想」も、もはやオヤジの独り言以上の何モノにもならないと思います。

まず、宮台真司的な”終わりなき日常”に耐えきれない人達(この映画ではカルト教団信者)が起こす自作自演のハルマゲドンっていうネタは完全に賞味期限切れてますよね。サブカルチャーにおけるその問題については、前世紀末にオウム真理教が実際に事件を起こした後にヱヴァンゲリヲンが「キモチワルイ」と一刀両断して決着つけましたよ。それを今さらマジな顔してやられるのは厳しいです。

あと"ロックンロールによる革命"の方も、原作者である浦沢直樹と同世代の人たちのノスタルジーを喚起する効果はあるんでしょうけど、私はその時代感覚に全く同調できないので何も感じません。おそらくロック革命世代は再起するケンジのギターを掻き毟る姿に奮起するのでしょうが、正直私には「夜中に何やってんだ?迷惑だろ・・・」てなとこです。

加えてこの映画は、音楽の使い方やカメラワーク、編集のテンポなどが非常に下手です。やたらと感情を煽るような演出もとても鼻につきました。本当にこの映画は何が面白いのかさっぱりわかりませんでした。

P.S.
唯一褒めるとすれば、カンナ役の子役がラーメンを注文するシーンが可愛いかったとこぐらいです

「20世紀少年 第1章 終わりの始まり」
公開:2008年8月30日
配給:東宝
監督:堤幸彦
脚本:長崎尚志、福田靖、浦沢直樹、渡辺雄介
出演:唐沢寿明、豊川悦司、常盤貴子、香川照之、石塚英彦、佐々木蔵之介、宮迫博之
上映時間:142分

片腕マシンガール - 52点 △

自主規制ゼロで女子高生が暴れまくり!

ヤクザの息子、木村翔をリーダーとするいじめグループによって弟を殺された女子高生・日向アミが復讐を挑むバイオレンスアクション!弟の仇を追う途上、敵の本丸に拉致されたアミは拷問の末に片腕を失うが、弟同様にいじめによって息子を失った自動車修理工の杉原夫妻の協力を得て、失われた腕に特製マシンガンを装着!史上最強の女子高生「片腕マシンガール」として復讐の鬼と化すのであった!

不謹慎で過剰な暴力表現や、そこかしこに漂う"C級感"に終始歯がゆい気持ちで観賞するハメになりましたが、主演の八代みなせと仲間役の亜紗美の一生懸命な演技が胸にビシビシ伝わってくる映画でした。「仕事として引き受けたからには真剣勝負!」と言わんばかりの全力投球っぷりに感動しました。女子高生がパン◯ロしながら暴力を振るって人体破壊!血しぶきブシャァーッ!みたいなスプラッタ描写満載のトンデモ映画ですが、作り手の熱い魂が感じられる心の置き場所に困る作品です。

「片腕マシンガール」
公開:2008年8月2日
監督:井口昇
出演:八代みなせ、亜紗美
上映時間:96分

パフューム ある人殺しの物語 - 90点 ◎

ハマる人にはエクスタシーを感じるほどの傑作!

彼の狂気にも似た”匂い”への執着。 極限まで純化した欲望に突き動かされた彼のふるまいは、"匂い"それ以外は全て無価値と言わんばかりに無神経で、それは生(≒愛?)への渇望らしいのだが、ひどく滑稽で見ていられません(笑) 物語前半から「コレ笑っていいの?」というシーンの連発でしたが、なぜか私は「神妙な面持ちで観よう」的な呪縛に支配されていました。

そんな葛藤を抱えながらも目が離せないまま濃密なドラマが進行していきます。しかし、終盤のローラ殺害シーンでドアを開けたスネイプ先生が神々しい光に包まれたところでその呪縛がぶっ飛び、クソまみれの地獄から始まったグルヌイユの人生が"絶頂"へと突き抜ける最後のシークエンスと、司祭のおじいちゃんのセリフで限界を超えました。

これこそがオルガズムであり、エクスタシーなのだと思う。まさに噴飯モノの爆笑で、体が心地よくシビれるほど笑えました。いやぁ、この映画はキタよ。ここまで見応えある作品は滅多にお目にかかれません。本当に素晴らしい怪作だと思います!

「パフューム ある人殺しの物語」
公開:2007年3月3日
配給:ギャガ・コミュニケーションズ
監督:トム・ティクヴァ
脚本:トム・ティクヴァ、アンドリュー・バーキン、ベルント・アイヒンガー
出演:ベン・ウィショー、ダスティン・ホフマン、レイチェル・ハード=ウッド、アラン・リックマン
上映時間:147分

プレデターズ - 30点 △

バイオレンス表現が弱く、全然食い足りない

最初に言ってしまいますが、この映画かなりイマイチっス

1987年にアーノルド・シュワルツェネッガーが火蓋を切った人間vsプレデターの最新試合!今度の戦場は完全アウェーの謎の惑星!プレデターの狩場である密林のジャングルに強制拉致された殺人のプロフェッショナル達は、この地獄から生還することができるのかーーーっ!!!?

ってゆー話なのですが、まず登場人物の説明と密林さまよいシーンが延々と続く前半にかなりゲンナリです。「ダラダラやってないでさっさと戦ってほしいんだけど・・・プレデターさんまだスか?」って感じで何回も時計をみてしまいましたよ(笑)で、やっとこさプレデターとのバトルが始まるものの、何なんでしょうか?この新鮮さの欠片もない戦闘描写の数々は。選ばれた最強の人類vsプレデターという期待を完璧い裏切るヌルい描写で、心底ガッカリしましたよ。

それに「人間もヤツらと同じプレデター(捕食者)なんだ・・・」とかっていう中途半端なテーマもペラペラですし、1作目のオマージュ(音楽とか同じようなシチュエーションとか)も劣化コピーレベル。それに私が大好きな治療シーンが無かったのは大幅減点です。「1作目ファンは大喜び」というレビューを観ますけど、私からすると全然ダメですね。

あと最後にまぁ主人公が頑張ってくれるんですが、途中で主人公達が出会うサバイバーが「やつらは獲物に逆にやられたら、その弱点を検証して次の狩りでは克服してる」的なこと言ってましたよね?だったら1987年にプレデターがかました最大のヘマである"泥隠れ"とかとっくのとうに克服してんじゃないんですかね?とかとか・・・もうツッコミ出したらキリがありません。

"目覚めたら突然、超高速で空を落下中"っていう余計な説明は一切抜きのオープニングが超良かっただけに、その後のグダグダっぷりに心底ガッカリしました!(笑)

「プレデターズ」
公開:2010年7月10日
配給:20世紀フォックス
監督:ニムロッド・アーントル
脚本:マイケル・フィンチ、アレックス・リトヴァク
出演:エイドリアン・ブロディ、トファー・グレイス、ローレンス・フィッシュバーン、ダニー・トレホ、アリシー・ブラガ、ブライアン・スティール

  

金融腐蝕列島-呪縛- 90点 ◎

男達が飛び交わす怒号に痺れまくり!

金融業界の内幕を描きベストセラーとなった高杉良の同名小説を、原田眞人が映画化。長年続けてきた総会屋への不正融資がたたり、ついに検察の強制捜査が入ることになった朝日中央銀行(通称:ACB銀行)。この事態に経営陣はパニックに陥るも、行内の権力者である佐々木相談役の顔色を窺ってばかりだった。この事態に奮起した4人の中間管理職(通称:ACBミドル)の男達は、悪しき因習を断ち切り、銀行の再建を図るための戦いを開始する。 上層部、地検、マスコミ、総会屋、すべてを敵に回した命懸けの銀行改革は、果たして成し遂げられるのだろうか?

ということで「金融腐蝕列島-呪縛- 」を観ましたが、この映画はめちゃくちゃ役者が輝いていますね。銀行再建に魂を燃やすACBミドル(中堅社員)に役所広司、椎名桔平、矢島健一、中村育二。老害と化したACBのボスに仲代達矢。ミドル達をバックアップする上層部の理解者に佐藤慶、石橋蓮司。真相究明委員会の弁護士にもたいまさこ。ACBを襲う特捜部のリーダーに遠藤憲一、ブルームバーグTVの女性アンカーに若村麻由美と、素晴らしい役者達が魅力的なキャラクターを演じ、組くんず解れつ乱れながら、銀行、検察、マスコミ、総会屋の攻防を描き上げる。男達の激しい怒号の飛ばし合いに、震えるような興奮を覚える一本です。

*以下、ネタバレ含む

この映画の主役である役所広司を始めとしたACBミドルは本当に魅力的ですね、この4人は別に崇高な信念をつらぬく気高き男達ではなく、問題意識を抱えつつも自己保身の意識に負け続けてきた中間管理職の連中だった。それが外部からの圧力による崩壊の危機に瀕してようやく己を奮い立たせる。この「どうせ死ぬなら・・・やってやるよ!!」的な、ギリギリまで追い詰められたが故の覚醒は非常にリアリティーがありますね。4人の動機は、責任感や、反骨心、アイデンティティー、ヤケっぱちなどバラバラですが、魂に火がついたその勇姿は、同じ男として震えるものがありました。

ちなみに僕は、MOF担役の椎名桔平に一番グッときました。過剰接待を武器に大蔵省の官僚から情報を引き出す”汚れ役”という設定がかなり萌えます。特にマザコン変態坊やに対するあの低姿勢は絶品!最後にはバシッと決まる見せ場もあって最高です。椎名桔平は元々好きな役者さんですが、さらに惚れました。

もちろん、主役である役所広司が上司に噛みついたり、仲間と喧嘩して怒鳴ったりするシーンも絶品です。冒頭の調査委員会での「弁護士さんこそ黙っててください!」を筆頭に燃える怒号を吐きまくり!心地よく痺れました。

ちなみに私、原田眞人監督作品はこの「金融腐蝕列島 呪縛」と「クライマーズ・ハイ」しかみていないのですが、この監督、両作品とも登場人物をやたら怒鳴らせますね。こんなにも胸を打つ”怒鳴り合い”は他の映画では観たことがありません。この監督の特徴なのでしょうか?他の作品もチェックして確かめてみたいと思います。ということで、映画「金融腐蝕列島-呪縛-」」オススメです!

P.S.
この映画にはなんと、村上淳、オダギリジョー、三浦春馬といった今をときめく俳優も出演しています(三浦春馬なんてまだ10歳にも満たない子役!)。初々しすぎる彼らの姿も、また一つ楽しいポイントです。

「金融腐蝕列島-呪縛-」
公開:1999年9月18日(土)
配給:東映
監督:原田眞人
脚本:高杉良、鈴木智、木下麦太
出演:役所広司、椎名桔平、矢島健一、中村育二、仲代達矢、遠藤憲一、風吹ジュン、若村麻由美、佐藤慶、根津甚八
上映時間:114分

サマーウォーズ - 70点 ◯

ご都合主義が過ぎる・・・が素晴らしい!

映画「サマーウォーズ」は、提示された表現の数々を自分の快楽原則に沿ってフィルタリングし、再構築して、自分の都合の良いように消費できる能力を持つ観客にとっては大傑作になり得る映画だと思います。 俺は何を言ってるのでしょうか?

私はこの映画の観賞中、仮想空間OZ(オズ)内で繰り広げられる主人公健二と格闘王キングカズマ、ハッキングAI「ラブマシーン」の大バトルのスペクタクルに燃えまくりましたし、人生を生きていく上での重要な基礎資本となる家族の大切さを再認識させてくれる陣内家の生活描写に感動しました。エンドロールの山下達郎の曲を聴きながら「面白かったなぁ」と余韻に浸りつつ、次代のアニメ業界を担う逸材という監督の評判に偽りはなかった、と嬉しく思ったりしました。

しかし!レビューを書こうとパソコンに向かって物語を回想している内に、仮想空間OZと現実の田舎、この両極端な2つの世界を巻き込んだ事件が起こるという、物語を成立させる為の設定や手段があまりにもご都合主義的すぎて、手放しに褒められない作品であると思ってしまいました。

まず仮想空間のOZですが、そもそも世界中の政府が行政システムやライフライン(信号機や電車のダイヤ)までも依存する仮想空間っていう存在がありえないし、しかもその重要なシステムのセキュリティレベルがあんなに低いってのが到底納得できません。この事件発生の原因となる部分の説得力が脆弱なので、のっけからシラケてしまう人もいっぱいいると思います。

次に、OZの説得力の弱さについては百歩譲ったとしても、その事件の主要人物(健二、佳主馬、侘助)が全員同じ場所に居合わせるというのは偶然にしても都合が良すぎだし、現実世界にとんでもない一大事が迫ってるっているのに、それに対抗するのが中1と高2の子供&その親戚だけっていうのはいくらなんでもおかしいです。

さらに、もっと根本的な事を言うと、OZ内で騒動を起こすハッキングAIの行動が納得できません。このAIにプログラミングしたのは「知識欲」だと開発者である侘助が言っているのに、道路の信号機を狂わせたり、電車のダイヤを乱したり、水道管ぶっ壊して街中を水浸しにしたりと、知識欲の発露とは関係のない破壊行動を起こしまくる。つまりあきあらかに"暴走"してます。なのに侘助のあの態度。ここもおかしいです。

さらに終盤、みんなAIにやられた揚句の大勝負、「このAIはゲーム好き」という無根拠な話からの花札勝負という展開。しかも、なぜかヒロインが戦うことになるという支離滅裂っぷり。いや、映画のヒロインなんだから見せ場の一つもなきゃいけないってのはわかりますが、27人も親戚がいるのだから、その中で夏希が一番強いというのを説得するシーンをちょっとは入れてください。

などなど、ご都合主義&説明不足を挙げればキリがなく、一本の映画としてスジが通っていないため、一般的な方法でこの映画を評価するならば、大絶賛の論調に反して「駄作」の烙印を押す人がいても全然おかしくない作品だと思います。

しかし!私はこの映画が大好きです。

ここで最初に言った話に戻りますと、この映画を絶賛する人が大勢いるのは、インターネット上のコミュニケーションに代表されるような、断片化し、キーワード化した対話の様式に対応するスキルを身に付けた人が多いってことだと思います。

それは、相手から発信された情報から重要な部分を取捨選択し、必要に応じて自己保管する能力を身に付けた人々という意味です。「いや、元来人と人とのコミュニケーションとはそういうものだろ?」と思われるかもしれませんが、今言ってるのはそれの過剰な発展形です。誤解を恐れずにあえて<現代の若者>とでも言っておきましょう。

彼らには上記のようなネガティブ要素をフィルタリング・除去する能力があり、素晴らしい映像表現だけ純粋に享受するような感受性が身に付いているのだと思います。そのような人達にとってこの映画は、まさに快楽的な珠玉の映像表現(の断片)の宝庫。大いに感動し大絶賛を送るでしょう。

この映画に限らず、批判に対してよく聞かれる反論「素直に観てない」発言の源泉はこのような感受性の形態からくるものなのだと思います。

これは、どっちが良いとか悪いとかの話ではないですが、とにかく僕はこの映画が面白かったです。自分の感受性を確かめるためにも、是非一度ご鑑賞をお勧めします。ということで映画「サマーウォーズ」オススメです!!

「サマーウォーズ」
公開:2009年8月1日
配給:ワーナー・ブラザース映画
監督:細田守
脚本:奥寺佐渡子
出演:神木隆之介、桜庭ななみ、谷村美月
上映時間:115分

     

カイジ~人生逆転ゲーム~ 45点 △

よく頑張った!だが・・・ダメ・・・っ!

<あらすじ>金なし、女なし、やる気なし。典型的な負け組である伊藤開司(藤原竜也)は日々自堕落に暮らしていた。そんな彼の元に闇金の社長である遠藤凛子(天海祐希)が現れる。2年前、軽率にも保証人になってしまった友人の借金を取り立てに来たのだ。返済する宛のないカイジは狼狽するしかなかったが、遠藤は図ったように借金を帳消しにできるゲームへの参加を言い渡す。それは豪華客船「エスポワール(=希望)」で行われる命を賭けた生き残りゲーム!今、借金で首が周らなくなったクズ共の騙し合いのバトルロイヤルが始まる!

ってゆー。福本伸行の人気漫画「カイジ」シリーズが実写映画化されてしまいました。あの独特過ぎる絵、複雑に構築した論理、心を鷲掴みにするパンチライン(=強烈な台詞)、そんな福本漫画の魅力をどこまで実写で表現できるか!?この無謀な映画化の評価ポイントは、どうしたってそこですよね。

今作は、原作で言うところの「限定ジャンケン」「高層ビル鉄骨渡り」「地下世界」「Eカード」「パチンコ~沼~」ら辺までの複数にわたるエピソードを、スクラップ&ビルドして余分な部分を捨て、2時間に収めることにチャレンジしています。

しかし、大方の予想通りこの手法には無理がありました。そもそもで各エピソードには、それぞれ単体で1本の映画になるぐらいのボリュームや深みがあるため、今作のように所々つまみ食いしてムリヤリつなぎ合せても、下手なダイジェストにしかなりません。結果として、原作で得られる強烈な体験とは程遠い薄味なカイジになってしまいました。

『限定ジャンケン』は、時間経過に応じた星とカードの価値変動によって起こるドラマが面白いのに、そこを完全に省略して単なるイカサマ勝負にしちゃってましたし、『高層ビル鉄骨渡り』も「伝われば達する、通じたと信じる」とか「60億の孤独」とか「善悪割り切れない存在としての人間」とかの熱い話を全面カット。単なる「俺は生きてるぞーー!」っていう情緒的なだけの話に成り下がってました。

挙句にクライマックスの『Eカード戦』も不発でした。大衆娯楽にそぐわない「耳そぎ」「焼き土下座」あたりをカットしたのはしょうがないと思いますが、そもそもあの勝負は艱難辛苦を乗り越えた果てに、やっとの思いで敵の本丸にたどり着いたカイジが決死の覚悟で挑んだ勝負なんですよ。何も持たないクズが、連戦連勝の大悪党を相手に"肉を切らせて骨を断つ"場面なんです。だからこそあの勝利に我々は「うぉおおおーーっ!!!」とハートを震えさせたわけだけど、前述の通りこの映画は下手なダイジェストになってしまっているので、主役の藤原竜也が目を血走せて叫べば叫ぶほど、なんだかこっちの気持ちがどんどん冷めていく感じでした。

それに"カイジ的"な演出で重要な「ぐにゃ~!!」をやってくれなかったのも寂しい限りです。「ざわざわ」もアッサリ風味でしたし。この辺は中途半端に手を出すと危ないからかもしれませんが、カイジをやるなら避けて通れない道だったと思います。

ってゆー具合に、原作と比較しちゃうと文句ばかりが口をついて出てくる作品なのですが、この無理難題に立ち向かってなんとか映画のカタチに仕上げたスタッフには"カイジの精神"を感じました。っていうかそもそも無理ですよ!この漫画を実写化するなんて!!(笑) ということで、そんなスタッフへの「お疲れさま」的な想いも込めまして、映画「カイジ~人生逆転ゲーム~」はオススメです!

「カイジ~人生逆転ゲーム~」
公開:2009年10月10日
配給:東宝
監督:佐藤東弥
脚本:大森美香
出演:藤原竜也、天海祐希、香川照之、松山ケンイチ
上映時間:129分

奇跡のシンフォニー - 85点 ◯

奇跡を、幸せを恐れない。それはその辺に転がっている。

<あらすじ>孤独な少年が音楽と出会い、音楽によって両親とのきずなを取り戻す感動のファンタジー。孤児院で育ったエヴァン(フレディ・ハイモア)には豊かな音楽の才能が備わっていた。ある晩、エヴァンは不思議な音を追い、施設からマンハッタンへと導かれる。そしてさまざまな出会いにより、エヴァンの音楽の才能は開花する。同じころ、離ればなれとなっていた両親もそれぞれの思いを胸にニューヨークへと赴いていた。そして・・・エヴァンのタクトが音楽を奏でる時、奇跡が起きる!!

少年の奏でる音色が人と人との心を繋ぐ。”出会い”という名のハーモニーが生んだ奇跡。心の声に従い生きることこそが命を輝かせる。この映画が描く奇跡の数々に、「ンなことあるかい!」とツバを吐くのは簡単。しかし、それが人生の輝きを奪ってるのだということに気づく。奇跡(≒幸せ)を受け入れる勇気を持つべきだ。だってそれはその辺に転がってるんだから。それを無いものとしているのは、失敗するのが怖いからであり、失うのが怖いから。奇跡を、幸せを恐れない。この映画から得られるモノは非常に大きいと思います。

ちなみに、音楽映画は劇中流れる音楽自体や、演奏シーンがダメだと、途端に興醒めしますが、今作はそこも見ごたえ十分!劇中流れる音楽。クラシック、ロック、ブルース、ゴスペル、そのすべてが素晴らしい。演奏シーンでの演技も非常に素晴らしく、ビート表現や指運びの丁寧さには大変関心しました。

少し文句をつけるなら指揮シーンでしょうか。あそこだけはイマイチな気がしました。あと、ラストシーンはもっと大袈裟な感動シーンにしちゃって良かったと思います。それまで(私的に)良い意味で「ンなことあるかい!」な都合の良い展開だったわりに、最後は控えめでしたね。ま、でもそんなことは瑣末なこと。私はこの映画を楽しみました。

「奇跡のシンフォニー」
公開:2008年6月21日
配給:東宝東和
監督:カーステン・シェリダン
脚本:ニック・キャッスル、ジェームス・V・ハート
出演者 フレディ・ハイモア、ケリー・ラッセル、ジョナサン・リース=マイヤーズ、テレンス・ハワード
上映時間:114分

  

最高の人生の見つけ方 - 56点 ◯

金持ち設定が原因でテーマがブレた

一度きりの人生、やりたいことをやれ!・・・とは言うけれど。

贅沢三昧で派手に生きてきた豪腕実業家エドワード(ジャック・ニコルソン)と、自分を犠牲にして家庭一筋で生きてきた自動車修理工カーター(モーガン・フリーマン)。正反対の人生を歩み、接点のない二人が、ガン病棟の一室で出会った。二人は奇妙な共同生活のなかで心を通わせていくが、残酷にも余命宣告の時がきた。医者や家族は延命治療を進めるが、2人はそれを断り、死ぬ前にやっておきたいことリスト「The Bucket List(棺おけリスト)」を作成。それを達成する人生最後の冒険旅行に出掛けることにした・・・。二人の男が人生最後に見つけた本当の幸せとは?

この映画は、とにかく「一度きりの人生だ!やりたいことやろうぜ!」というメッセージの一本勝負ですね。スカイダイビングをしたり、サーキットでブッ飛ばしたり、ピラミッドを見にエジプトに行ったりと、とにかく世界中まわって、楽しみまくって笑いまくってる二人の姿が描かれます。最後に個々の実存的な悩みが解消されるような描写がちょこっとあるけれど、バカ騒ぎ描写だけじゃバカっぽいからちょっと入れてみましたという程度で、無理やり着地させた感が否めませんでした。

死を目前にして初めて殻を破り、生を充実させる彼らの有り様。それを素直に受け止めれば「お前には時間が大量にあるんだから、元気なウチにやっちゃえよ」的なメッセージとして肯定的に受け取りたいトコろなのですが・・・すご~く素直に感想を言うと「お金持ちっていいなぁ」って感じでした(笑)残念ながらこの金持ち設定のせいでメッセージが弱まったというか、他人事になってしまった感が否めません。

しかし、さすがの名優達ですよ。観てるだけでなんか楽しかったです。また今作では、悟りを開いた賢者のような役が多いM・フリーマンには珍しく、感情的になるシーンがあり新鮮でした。

「最高の人生の見つけ方」
公開:2008年5月10日
配給:ワーナー・ブラザーズ
監督:ロブ・ライナー
脚本:ジャスティン・ザッカム
出演:ジャック・ニコルソン、モーガン・フリーマン
上映時間:97分

ハプニング - 55点 △

私的M・ナイト・シャマラン節・・・不発!

<あらすじ>ニューヨークのセントラルパークから始まる大量自殺事件。原因不明の異常事態に「テロか?」「伝染病か?」「政府の秘密研究か?」「自然災害か?」と憶測が憶測をよび、疑心暗鬼に陥った市民達が恐怖のどん底に堕ちていく。主人公(マーク・ウォールバーグ)は、最近仲が上手くいっていないワイフと、友人から託された娘を連れ、3人でなんとか生き延びようと奔走するが・・・

という感じで映画「ハプニング」を観ました。大どんでん返しで大ブレイクしたシックス・センス以来、同じようなインパクトの大どんでん返しを期待する観客をことごとく裏切ってきたM・ナイト・シャマラン監督の作品群が総じて好きな私ですが(特に「サイン」と「ヴィレッジ」が最高!)、そんな私でも今回の「ハプニング」だけはいただけません、むしろこの映画自体がハプニングといった感じです(笑)

シャマラン監督は正体不明の恐怖に対する不安感を描くのが本当に上手な人で、オープニングから終盤まで終始「一体どうなるんだろう?」と、視線を奪い続けるストーリーテリング力は今作でも顕在。

しかし・・・しかしです。今作は私がシャマランに求めてる「うっわ~、ソレを出しちゃうのかよー(笑)」的なトンデモ展開が一切無いんです。シャマランの真骨頂はそのトンデモぶりにあるのに・・・なんで今回やってくんなかったんでしょうかね。ガッカリしました。

「ハプニング」
配給:2008年7月26日
配給:20世紀フォックス
監督:M・ナイト・シャマラン
脚本:M・ナイト・シャマラン
出演:マーク・ウォールバーグ、ズーイー・デシャネル、ジョン・レグイザモ
上映時間:90分

エクスペンダブルズ - 99点 ◎

アクション映画史上、最高傑作の完成!(俺的に)

自らを「消耗品(Expendable)」と呼び、業界最強を誇る精鋭部隊「エクスペンダブルズ」。ギャラは高いが仕事は確実。そんな最強軍団に舞い込んだ次なる依頼は、南米の島国・ヴィレーナの軍事政権を牛耳るガルザ将軍の抹殺。ミッション攻略のため、事前調査で現地入りしたバーニー(S・スタローン)とクリスマス(J・ステイサム)は、反政府運動を指揮する女性闘士・サンドラの案内で島を観察するが、敵襲に遭い、銃撃戦に巻き込まれてしまう。辛くも敵を撃滅したバーニー達は、この依頼の裏にCIAの陰謀を嗅ぎ付ける。「理不尽な仕事はしない」がポリシーであるエクスペンダブルスは仕事を断ることにするが、現地で一人戦うサンドラが忘れられないバーニーは、仲間の反対を押し切って単身ヴィレーナに向うことを決意。決戦当日、飛行機に乗り込んだ彼を待ち構えていたのはエクスペンタブルズのフルメンバー達!「一人で行かせられるわけねーだろ!」。笑顔で死地に向かう男達の戦いが、今始まる!

映画「ランボー最後の戦場」で、戦いのリアリティーを追求したシルヴェスター・スタローン監督がまたしてもぶちカマしてくれました。しかも、今回は「ランボー」のようにストイックな内容ではなく、ジェイソン・ステイサム、ジェット・リーなど主役級の豪華キャスティングによる、サービス満点の痛快エンターテインメント!スカッと観るのにちょうど良い上映時間(103分)も相まって、実にに楽しい時間を過ごせます。

*以下、ネタバレあり

この映画の魅力が、リアルな戦闘描写なのは言わずもがなで、大口径の銃で撃たれた人間の人体破壊描写(上半身が吹っ飛んだり、肉片が飛び散ったりする表現)は「ランボー」時の迫力そのままに、今回は近接戦闘でも見所満載!ナイフで腕を切り落とす、胸元から喉笛までグイッと切り裂く、腕や首を強引にへし折るなどの、自主規制ゼロな残虐表現の数々に圧倒されまくり!まるで本物の戦いを目撃しているような高揚感に、アドレナリン出っぱなしでした。

特に今作はジェイソン・ステイサムのアクションが抜群で、マーシャルアーツの身のこなしや、拳銃やナイフ(彼の場合は忍者の武器であるクナイ)の扱い方に惚れ惚れしてしまいました。トランスポーターシリーズでみせるような一風変わったアクションも面白いですが、私は断然こっちの方が好みです。しかも、ジェイソン兄貴らしからぬ”女のことでグダグダいう男”というキャラ設定も新鮮でした。

もちろん、スタローンも負けてません。銃撃戦、肉弾戦を問わず、年齢を全く感じさせない動きのキレはもはやそれだけで感動的だし、J・ステイサムと競い合う拳銃(コルトS.A.A.カスタムという銃らしい)の早打ちも超クイック。ナイフ捌きなんかはメンバー中一番エグくてシビレました。

他にも、ジェット・リーのクンフーアクション、ドルフ・ラングレンの極真空手仕込みの動き、総合格闘家ランディ・クートゥア&WWFの元スター選手・スティーヴ・オースティンによる肉弾戦、元NFL選手テリー・クルーズの大口径の銃(AA-12という銃らしい)による人体破壊などなど!手に汗握るアクションの超メガ盛り!

とどめには、水陸両用飛行艇「アルバトロス号」によるアクロバティックな空対地攻撃や、ガルザ将軍邸の破壊などのド派手な爆破シーンも用意されていて、お腹一杯の大満足!監督は「アクション映画史上の最高傑作を作る!」という意気込みでこの映画をつくられたそうですが、いやはや、本当に史上最高のアクション映画が完成したと思います。

さらに、この映画にはコメディー要素もチョロチョロ入れてあって、激しい戦闘シーンの箸休めとして効いてます。カメオ出演するアーノルド・シュワルツェネッガーとの面白い会話や、女にフラれて落ち込むJ・ステイサムとスタローンのガールズトークならぬ”ボーイズトーク”など、チーム男子的な腐女子マーケットへの目配せがスタローンにあるとは思いませんが、とっても面白かった(笑)

最後に着地させる「人は食うためだけに生きるにあらず!」っていうシンプルなメッセージもイイですね。こういうのは生半可な人物が言ったら寒くなるけど、スタローンが言えば超納得。胸にグッときてハートが熱くなりました。それにもう1つの「男たるもの、こうあれ!」っていうメッセージもイイね。「女を泣かすヤツ、ましてや女を殴るヤツはブッ殺して良し!!」って最高じゃん(笑)ボコボコにされたアイツにはわるいけど、超スカッとしました。こういうカタルシスをちゃーんと用意してくれるスタローン師匠、ホントにもう最高としか言えませんね(笑)

ということで、ちょっとテンション上がり過ぎて勢い余り気味に「99点!」とかつけてますが、とにかく映画「エクスペンダブルス」は超×1億オススメです!!!

P.S.
ちなみに、グロ表現が苦手な方にとっては「0点」なので、ご注意を(^^;

<キャスティング>
バーニー・ロス:シルヴェスター・スタローン
リー・クリスマス:ジェイソン・ステイサム
イン・ヤン:ジェット・リー
ガナー・ジェンセン:ドルフ・ラングレン
ヘイル・シーザー:テリー・クルーズ
トール・ロード:ランディ・クートゥア
ダン・ペイン:スティーブ・オースティン
モンロー:エリック・ロバーツ
ガーザ将軍:デイヴィッド・ザヤス
ガーザ将軍の部下:アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ、アントニオ・ホジェリオ・ノゲイラ
ブリット:ゲイリー・ダニエルズ
サンドラ:ジゼル・イティエ
レーシー:カリスマ・カーペンター
トゥール:ミッキー・ローク
Mr. チャーチ:ブルース・ウィリス
トレンチ:アーノルド・シュワルツェネッガー

「エクスペンダブルズ」
公開:2010年10月16日
配給:松竹
監督:シルヴェスター・スタローン
脚本:デイヴ・カラーハン、シルヴェスター・スタローン
出演:シルヴェスター・スタローン、ジェイソン・ステイサム、ジェット・リー、ドルフ・ラングレン
上映時間:103分
製作費:$80,000,000