ベンジャミン・バトン 数奇な人生 - 56点 ◯


人生への肯定的な諦観を静かに描いた佳作。

<あらすじ>ある日、母親の命と引き換えに老人のような姿の赤ん坊が生まれた。しかし、妻の死と子供の醜さにショックを受けた父親は衝動的に子供を捨ててしまう。その赤ん坊を拾った黒人女性クイニーは彼をベンジャミンと名付け、自分の職場である老人ホームで育て始めることになるが、赤ん坊は日々若返っていく特異体質を持つ子供だった・・・。これは、老人の姿で生まれ、日々若返っていく。普通の人間とは逆の人生を歩む、ある男の奇妙な一代記である。

おすぎ先生も大絶賛の映画「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」なわけですが。この"だんだん若返っていく"という設定から、宮崎駿の「ハウルの動く城」を思い出した人も少なくないのではないでしょうか?

ハウルでは魔女に魔法をかけられて老婆にさせられた少女が、ハウルとの短い冒険の間に老人から若者に戻っていく経過を辿るわけですが、ハウルへの想いが母親的であったり、恋人的であったりするその時々でパッと姿が元に戻って、一瞬少女に見えたかと思ったら、次の瞬間老女に戻っていたりと目まぐるしく姿が変化するので、わりと軽快な感じで見れましたよね。

一方のベンジャミン・バトンは、ハウルとは違って老→若は完全に一方通行で、それこそ一生分の時間をかけて(=167分という長尺をかけて)ゆ~・・・っくりと老→若に変化していきます。時に若返りという奇妙な体質が生む人々とのすれ違いはあれど、彼の人生は幸も不幸も交えた普通のもの。そんな彼の人生がやたらと静かに、淡々と進行する。その”侘と寂”をたたえるような映画全体の空気に、次第に奇妙な気分になってくるんですね。奇妙というかなんというか、とっても・・・不思議な気分になってくるというか、まぁハッキリ言ってしまうと・・・ちょっと退屈なんですよね(^^;

とはいえ、この作品は退屈なだけの映画ではありません。むしろ面白いです。老人時代に出会って以来、一生を通じて様々な距離感で付き合うことになるケイト・ブランシェットとの関係、二人の年齢が一時期とはいえピッタリ合うあの切なさ、あの愛おしい幸せは”永遠で一瞬の何か”のようで、なんも言えずほろ苦い感動が味わえました。

人生は刹那的で、時にはクソッタレなんだけども、真剣に向き合って生きていればちゃんと幸せが訪れる。それは永遠じゃないけど、それで良いではないか?そんな人生に対する肯定的なメッセージを、「どうだ泣けるだろーー!!」みたいな仰々しい演出でもなく、説教くさい語り口でもなく、あたりまえの人生に、ちょっとした時間的歪みを加える設定のみで(実はシンプルな味付けで)描いたD・フィンチャーのセンスは称賛に値すると思います。

P.S.
老いの特殊メイクは若干の違和感がありましたね。若返りの方が素晴らしかったので、もうちょっと何とかなんなかったのかな、と思います。

「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」
公開:2009年2月7日
配給:ワーナー・ブラザーズ
監督:デヴィッド・フィンチャー
脚本:エリック・ロス
出演:ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット