重力ピエロ - 57点 △

オシャレっぽい脚本より、渡部篤郎の鬼畜演技!

伊坂幸太郎による第129回直木賞候補作の小説「重力ピエロ」の映画化。仙台の街で起こる連続放火事件。放火現場の近くには必ず奇妙なグラフィティアートが描かれていた。過去に辛い記憶を抱える泉水(いずみ)と春(はる)の二人の兄弟は、事件に興味を持ち謎解きに乗り出す。グラフィティアートと遺伝子との奇妙なリンク。謎を解き明かしたとき、その先に見えてくるものとは・・・。

無限に続く自己否定。そんな重圧を不可避的に背負わされた人間は、それにどう抗い、どう生きれば良いのか? そんな重いテーマが流れる今作ですが、物語を駆動する不幸の元凶がどうにもこうにも納得できないため、何かが喉にがつかえたまま観賞するはめになりました。

何よりあの決断をした両親の気持ちが理解できなかったし、すべての顛末が自作自演的(または自業自得的)で釈然としない。絶望的な悲劇が描かれるものの、どうにも観てる観客の人生に踏み込んでこないというか。しかも、最終的に「楽しそうに生きてれば、重力なんてなくなる(不幸はなくなる?)」といった主張されるわけですが、物語の帰結にスジが通ってないため、どこに着地したのかよくわかりませんでした。なんというか、面白かったっちゃー面白かったんスけど、なんかギクシャクした不思議な感覚になりましたね。

ちなみに渡部篤郎と、吉高由里子の演技はとても素晴らしかったです。特に渡部篤郎の構築した葛城(かつらぎ)という悪人の人物造形は強烈に心が惹きつけられました。この男はとんでもない鬼畜・外道なのですが、むしろ虚飾を脱ぎ去った男の清々しさのようなモノがあり、見ていて心が踊りました。彼の演技を見れたことはこの映画に感謝したいところです。

「重力ピエロ」
公開:2009年5月23日
配給:アスミック・エース
監督:森淳一
脚本:相沢友子
出演:加瀬亮、岡田将生、小日向文世、鈴木京香、渡部篤郎、吉高由里子
上映時間:119分