SP the MOTION PICTURE 野望篇 - 35点 ✕

物語展開が中途半端。コレだったらアクションは大盛りにしてほしい。

<作品紹介>フジテレビのTVドラマ「SP 警視庁警備部警護課第四係」の劇場版二部作の第一弾「野望篇」。監督はTVシリーズの演出を務めた波多野貴文。出演は岡田准一、真木よう子、香川照之、堤真一ら。「仕方がないだろ。大義のためだ・・・」。自殺した理事官について係長・尾形総一郎(堤真一)が発した不穏な発言から1ヶ月。一見して平穏な日常が過ぎていたが、その裏では、公安の目をかいくぐり、不穏な動きを見せる国家の要職を担うキャリア官僚たちによる、日本という国家のシステムを根底から揺るがすテロが企てられていた。相次ぐ脅威への過剰反応(シンクロ)に苛まれる井上薫(岡田准一)はこの未曽有の危機を防ぐことができるのだろうか!?

この映画は、TVシリーズの最終回を劇場でやるというのが主旨とのことですが、普通のTVドラマが最終回でやってくれるような初見の観客への気配り(物語のおさらいや、登場人物のキャラクター説明)は一切しないという内容になっているため、私のような門外漢は冒頭から完全に置いていかれます。この辺は初見でもある程度楽しめる(というか話がわかる)内容にしていた「the Last Message 海猿」とはかなり違いますね。

しかも、やっかいなことに、この映画の主人公には特殊能力(=予知能力)という設定があり、それが一切説明なく披露されるため、「えっ?これってエスパーの話なの?」とか、「どんぐらいわかっちゃうの?」とか、「コイツ以外にもそういう特殊能力者がいたりするの?」みたいな疑問が頭にわいてしまい、今いちシャキッと観れませんでした。作品世界内のリアリティー水準を示さずにこういう能力を使うのは観客の混乱を招きますので、せめてこの部分だけは映画単体で理解できるようにした方がよかったんじゃないでしょうか。(ファン以外は観るな!というなら話は別でが、そうではないようなので)

*以下、ネタバレ含む

物語の内容についても微妙でした。まず、事件の黒幕(与党幹事長やキャリア官僚など国の要人達)が抱く野望が”自作自演のテロをキッカケにした日本国民の危機意識の喚起”という設定がかなり微妙です。9.11直後ならまだしも、2010年の今現在においては賞味期限が切れている印象です。しかも彼らの動機が”崇高な革命の精神”というのがこれまたなんとも・・・。

あまつさえこの「野望篇」は、その目的達成に向けた説得力のある計画は一切提示されず、なぜか邪魔であるとして目の敵にされた主人公の命が狙われるという内容です。与党幹事長ならその権力で主人公を現場から外すことぐらい容易いはずですが、なぜか殺すことに拘ります。しかも、一人のSPを殺すために暗殺集団を送り込むというトンデモ展開。こんな多大なリスクを自ら背負いこむ悪者達の行動が理解できません。

一方、この映画最大の見所であるアクションも今ひとつ突き抜けていません。撮影に向けて二年間のトレーニングを積んだ主演の岡田准一君や、他のSPメンバー達の体を張った頑張りのおかげで確かにカッコイイ雰囲気は出ていましたが、いくつかの蛇足演出とボリューム不足のせいで褒めたい気分に水を指されました、これは役者さんのせいではありません。全部監督の責任です。

まず、冒頭の六本木ヒルズから始まる追跡シーンのパルクールアクションですが、犯人を追いかける時に停止車両の上を走るのはヘンですよ。車と車の間には人が一人走るぐらいのスペースはあるわけで、何故そこを走らないのかが疑問です。演出的に盛り上げたいのはわかりますが、リアルアクションが売りの映画でそういう過剰演出をやってしまうと映画としての格が下がってしまうので控えるべきです。

次に追跡途中で起きる車の横転事故が派手すぎます。あんな大事故を起こしたら確実に重傷者がでてますし。下手したら人が死んでいます。なのに主人公はお咎めなし。コレってどういうことでしょうか?普通こんな大惨事を起こしたらクビになってもおかしくありません。これも先ほどの件と同様に、盛り上げる方向が間違ってます。

あと今作には”投げつけられた自転車を壁走りしてよける”というパルクールっぽい見せ場がありますが、これ系の「うおおっ!やるじゃん岡田君!!」みたいなアクションはもっと一杯観たかったですね。物語がこれだけ浅薄なわけですからアクションは大盛りにして欲しかった。「アルティメット」とか観ちゃってる身としては、あの一発だけでは全然物足りません。次の「革命編」はメガ盛りでお願いしたいところです。

最後にトラックの荷台で始まる武器を使った格闘シーンの対位法(格闘シーンであえて不釣り合いなクラシック音楽を流す等の)演出。コレは「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」でも「えっ?まだそれやるの?」と呆れましたけど、もういい加減この手の演出は飽きたし、もはやダサイのでやめてほしいです。

ということで、私は今作を楽しむことはできませんでしたが、僕の隣で観ていたファンと思われる女性二人組はキャッキャしながら楽しんでましたので、ファンにとっては楽しい映画なのだと思います。

ちなみに、ふと自宅のBlu-rayレコーダーをみたら「SP」のTV版を4、5話分ぐらいまとめて放送した録画データが発見されまして、夜通し観てみたところ、これが結構面白かった!正直、病院ジャックの話とか今作より全然面白かったぐらいです。

「SP the MOTION PICTURE 野望篇」
公開:2010年10月30日
配給:東宝
監督:波多野貴文
脚本:金城一紀(原案)
出演:岡田准一、真木よう子、香川照之、堤真一、松尾諭、神尾佑、野間口徹
上映時間:97分