相棒-劇場版II- 56点 ◯

相棒のキャラクターは最高!でもお話には乗れきれない。

<作品紹介>放送10周年を迎えた大人気刑事ドラマ「相棒」シリーズの映画化第二弾。監督にはTVシリーズのメイン監督であり映画化一作目の監督も務めた和泉聖治。主演はもちろん水谷豊&及川光博の”相棒コンビ”。共演には岸部一徳、神保悟志、六角精児、國村隼、小西真奈美、小澤征悦、原田龍二など。

<あらすじ>警視庁本部内で警視総監を含む幹部12名を人質にした籠城事件が勃発。犯人からの要求はなく、不可解な硬直状態が続く中、特命係の杉下右京(水谷豊)と神戸尊(及川光博)のコンビによる捜査で犯人の特定に至るも、解決を焦る捜査本部の指令によって機動隊員が突入。混乱の最中で犯人は銃殺されてしまう。拙速な上層部の動きに疑念を抱いた杉下と神戸は独自に調査を開始するが、事件の裏には、警視庁、警察庁を巻き込んだ巨大な陰謀が隠されていた・・・。

私はミッチーが相棒となったシーズン8から見始めた相棒 “初心者”なのですが、このドラマ面白いですよね。個性的なキャラクター達が活躍する軽快な刑事ドラマでありつつ、権力闘争の中で身を焦がしながら信念を貫く男達の英雄譚のようでもあり、その通奏低音には “善悪とは?”的なテーマが流れるという、なかなか味わい深い作品だと評価しています。

特にキャラクター達の起ちっぷりはお見事で、実直でスマートかつひと癖あるチャーミングな杉下&神戸による相棒コンビを筆頭に、二人をバックアップするキモカワな鑑識課・米沢くん(六角精児)。権力構造の中で信念を貫かんと身を焦がす大河内監察官(神保悟志)。コメディーリリーフ担当でありつつ時に熱い表情もみせるトリオ・ザ・捜一。杉下を静かに愛憎する小野田官房長(岸辺一徳)など、実力派俳優達の演技アンサンブルが本当に魅力的で、彼らのアクションを観ているだけで楽しめます。

今作「相棒-劇場版II-」でもそれは健在で、みなさんお馴染みのキャラを発揮していたことはもちろん、映画ならではの特別サービスもあって好印象でした。特に知的キャラである杉下右京がフィジカルに活躍するシーンや、神戸尊の(TVシリーズでも見え隠れしていた)正義感が爆発する激高シーンなんかは垂涎モノ。みていて心が躍りました。

特筆すべきは冒頭30分で、撮影や編集が素晴らしかったですね。ちょっとやり過ぎじゃない!?と思いつつも冒頭のエレベーターホールでのスーパースローはワクワクしたし、事件勃発から解決までの痺れるような緊張感と、リズミカルかつスピーディーな劇展開にはかなり燃えました。その様相は“映画版“としての風格十分!良く出来ていたと思います。

が、しかし・・・最初の事件が解決して以後は急速にトーンダウン。内容はどんどん地味になっていって、再び盛り上がることもなく終幕してしまいました。

ストーリーは映画版にふさわしく格調が高い感じで、過去に犠牲者を出した国家単位の陰謀があり、それに気づいた人間が正義感と復讐心で引き起こした事件によって陰謀が再燃。それに絡んだ警視庁と警察庁の権力闘争が巻き起こるといった感じ。で、最終的には「見逃せないものを観てしまった・・・」とTVCMでファンが語る驚愕の大事件も用意してあって、面白といえば面白いんです。がしかし、結構なボリュームで納得できない部分もありまして、今ひとつ乗り切れませんでした。

*以下、ネタバレ含む

まず、すべての発端となった7年前の事件が 公安による自作自演のテロという設定がイケてません。「SP野望編」の黒幕達も全く同じような動機で「平和ボケした日本人の目を覚ます」とか言って自作自演テロを計画していましたが、こういうのをフィクションでやられるとすごく寒く感じます。

というのも、現実世界ではもっとでかいスケールの陰謀が渦巻いてるんですよね。例えば911の自爆テロですが。当時ブッシュ大統領は防げたのにわざと防がなかった(*戦争する絶好の口実を得た)とか、事件の一報を聞いたラムズフェルト国防長官がブッシュの耳元で「千載一遇チャンスですよ」と呟いたとか、そういう話あるじゃないですか?そういう実際に起きた事件に絡んだ陰謀説と比べてしまうと、フィクションの中でちまちました自作自演テロの話なんかされても盛り上がれないです。

次に、その7年前の事件(公安の自作自演の件)ですが、あそこで死んじゃった小西真奈美の彼氏はどー考えても助かったはずです。 なぜ彼は起動した爆弾の存在に気づいてるのに船に残ろうとしたんでしょうかね?理解不能です。「お前は先に行け!」みたいに小西を逃がすんですが、「お前もさっさと逃げろよ!!」って感じでした。というか、この死が後に小澤征悦とか小西とかの怨念を生んで今回の事件の原因になるわけだから逆に罪深いですよね。で、結局この件のせいで小澤は死ぬわけだし・・・やっぱりこういうのは乗れません。

あと劇中の音楽がうるさかったですね。荘厳な雰囲気を出そうと何回も流される聖歌隊のコーラスみたいな音楽がホントうるさかったです。盛り上げようと努力するのは良いのですが、やたら要素を詰めこめばイイってもんじゃないですよ。例えば小西がアイツを撃ちそうになってるシーンは静かに見せてほしいです。映画という総合芸術は目に見えてる映像と耳から聞こえてくる音、そして観客の想像力とが掛け合わさって特別な体験になるのですが、なんだか詰め込み過ぎで想像力が入り込む余地がなく、窮屈な感じがしました。もうちょっと抑えた演出にしてほしかったです。

最後にコレは話を進めるためにしょうがなかったと思うんですが、大河内がminiSD渡しちゃうのはダメですよ。神戸の激高にほだされたのかもしれませんが、アレじゃどっちつかずの中途半端なヤローになっちゃうじゃないですか。大河内ってあーいうヤツでしたっけかね?違いますよやっぱ。

ということで、文句を一杯言いましたが、劇場版第一作目もそうだったように相棒2人のキャラクターがイイので、それを観てるだけで面白いわけで、それだけでオッケイな作品ではあります。っていうか最後の○○式でズラ~っと並んでいる警察関係者をバックに、相棒の2人が悲壮な表情を湛えてコッチに歩いてくるシーンなんかシビれちゃいましたしね。なんだかんだ俺、相棒好きです。

「相棒-劇場版II- 警視庁占拠!特命係の一番長い夜」
公開:2010年12月23日
配給:東映
監督:和泉聖治
脚本:輿水泰弘、戸田山雅司
出演:水谷豊、及川光博、小西真奈美、小澤征悦、宇津井健、國村隼、益戸育江、岸部一徳