GOEMON - 63点 ◯

キャラクターの”外見力”を究極的に高めた映画。圧巻の世界観。

<作品紹介>「CASSHERN」で長編映画デビューを果たして以来、約5年ぶりとなる紀里谷和明監督の第二作。豊臣秀吉による統治の時代。仮初めの平和を享受する日本に、彗星の如く現れた天下の大泥棒・石川五右衛門。金持ちから奪い、貧しきものに与える彼の活躍は庶民を熱狂させ、義賊として人気を集めていた。そんな中、五右衛門は盗みに入った屋敷からとんでもないものを盗み出してしまう。それは”パンドラの箱”と呼ばれる南蛮渡来の小さな箱だったが、実はその中には織田信長の暗殺に関わる重要な秘密が隠されていた―。

外見の作り込みがこんなにもキャラクターを起てている作品を初めて観ました。髪型や瞳の色、眉毛の色、衣装の色彩や装飾、照明の当て方、ポージングなど、紀里谷監督が今までクリエイターとして練り上げてきたであろう独創的な美意識と、世界観構築術を総動員して作り上げられたキャラクター達は、そこに立っているだけでどういうパーソナリティーを持っている人物かが伝わってくるような程、異常なレベルで”起っている”と思います。

これは一昔前に出版された「人は見た目が9割 」というトンデモ新書で知ったノンバーバルコミュニケーションという言葉を体現するような現象で、言葉で説明されなくても、見た目一発、動き一発でキャラの性格を理解させてくれるため、その振る舞いや行動には違和感がなく、感情移入がなめらかです。

GOEMONには多くの人物が登場しますし、何本もの細かいドラマが散発的に展開しますが、あまり混乱せずに観賞できるのは、紀里谷監督が持つノンバーバルコミュニケーション力の高さが一役買っていると思います。(*もちろん有名なエピソードを脚本のベースにしているという点もありますね。)

もっと言ってしまえば、紀里谷映画はキャラだけではなく、世界観そのものが起ってるんですよね。宇多田ヒカルのPVからしてそうでしたが、彼のつくる絢爛豪華で超美麗な世界は唯一無二です。画面が放つオリジナリティーが一発で紀里谷作品だと解らせてくれる。これってスゴイことだと思います。その根源は監督がインタビューで語った「世界を創造したいという欲求がある。これは神コンプレックスかもしれない」という発言からもわかるとおり、自分の欲求に従う素直さゆえだと思うのですが、他人の目を気にせずに「俺はこういうのがカッコイイと思う!だからそのまま創るぜ!」という思い切りの良さは好感がもてます。ややもすると「なんだこの自己肥大化ヤローは?」と不快に思われるかもしれませんが、生き方としてはそっちの方が幸せなのでリスペクトせざるを得ません。

*以下、ネタバレ含む

というように、紀里谷ワールド完全支持派な僕ですが、この映画にはダメな部分もいっぱいあります。私にとってはもはやチャームポイントとして機能していますが、これで満足してるわけではないので、あえて語り起こしてみたいと思います。(*というかそのダメポイントが改修されれば、大傑作映画ができると思っています)

まず、過去の名作達へのオマージュが今一つ下手です。パクりパクられみたいな件はシミュラークル的な問題ですし、もはやその世代が持つ記憶の問題ですが、単に絵面的にカッコイイから入れたというのがありありとしているため、観ていて恥ずかしいです。

例えば、茶々さまと五右衛門の関係は「カリオストロの城」だし、才蔵の家族が受ける仕打ちは「グラディエーター」、五右衛門と才蔵の若き日の対決は「FF8」のOP風、月をバックにした蹴り対決は「北斗の拳」、終盤の家康への接敵は「300(スリーハンドレッド)」という具合に、挙げればキリがないほど。これを気のきいたオマージュと受け取るか、下手くそなパクリと受け取るかは観客の主観によりますが、私は後者と受け取りました。

次に、物語はもっとスッキリまとめて欲しかったです。信長暗殺の真相や、才蔵と五右衛門の友情、石田三成の野望、根茎をめぐらす家康、五右衛門と茶々さまの淡い恋心などなど、色々な物語が重層的なハーモニーを奏でるのは良いのですが、終盤に「あ、まだ続くの?」みたいな展開が2回ぐらいあって少々くどかったです。違う言い方をすれば、クライマックス感を醸し出す演出をやりすぎなのかもしれません。

アクションシーンについてはもう一声も二声もほしい。超人的な身体能力表現は全然オッケイですが、あの妙にカクカクした動きには違和感を感じましたし、戦国無双的な蹴散らし表現はいくらなんでもやり過ぎです。あそこまで強いなら、「お前が天下統一して世の中平和にすればいんじゃね?」という話になってしまいます。

CGの違和感にもガックリさせられました。日常シーンは及第点をあげられますが、バトルシーンは見逃せないレベルです(特に草原!)。あそこまでゲームっぽい背景に人間を配置してしまうと安っぽい雰囲気が出てしまうし、統一感に欠けます。このCG使いの感覚は紀里谷最大の課題ですね。次回作に期待です。

最後に、音楽の使い方はもう少し控えめにして頂きたい。盛り上げ狙いで何回も「ジャジャーン」と大仰な音楽を鳴らされると、その意図とは裏腹に興が失われていきます。この問題は今作に限らず最近の映画で良くみられる傾向ですが、もう少し観客の想像力を信じても良いと思います。

という具合に、ダメポイントも沢山ある映画なのですが、何故か私はこの映画が嫌いになれません。おそらく紀里谷ワールドと相性が良いんでしょうね。

蜷川実花の「さくらん」、中島哲也の「パコと魔法の絵本」、ターセム・シンの「ザ・セル(J-LO主演)」のような、極彩色系の世界観を持つ映画はいくつかありますが、僕は紀里谷和明の「GOEMON」を支持します。次回作が公開されたら必ず劇場に観に行くと思いますし、前作の「CASSHERN」は未見なので、観てみたいと思っています。

P.S.
役者の演技は全員良かったです。みんな魅力的でした。
あと、佐藤江梨子、戸田恵梨香が超絶可愛かったです。

「GOEMON」
公開:2009年5月1日
配給:松竹、ワーナー・ブラザーズ映画
監督:紀里谷和明
出演:江口洋介、大沢たかお、広末涼子、ゴリ、中村橋之助、奥田瑛二、伊武雅刀、平幹二朗、寺島進、要潤、佐田真由美、玉山鉄二、佐藤江梨子、戸田恵梨香
上映時間:128分
興行収入:14.3億円
製作費:8億円