CASSHERN / キャシャーン - 31点 ✕

こんなに説教クサく語らないで欲しい。

<作品紹介>タツノコプロの名作アニメ「新造人間キャシャーン」の実写映画化。監督は宇多田ヒカルのPVで独特の世界観を表現した紀里谷和明。出演は伊勢谷友介、麻生久美子、唐沢寿明ら。

<あらすじ>長年に渡る戦争で荒廃し、あらゆる公害が蔓延する世界。”新造細胞理論”による人体再生実験を行っていた人類は、その途上で新しい生命体”新造人間”を生みだしてしまう。恐れをなした人類は彼らを処分するが、一部の新造人間を逃してしまう。生き延びた新造人間達は機械兵団を組織し、人類粛清の戦いを開始するが、その時、彼らの前に立ちはだかる男がいた!それは、彼らと同じ新造細胞で蘇った東博士の一人息子・東哲也の生まれ変り、”新造人間キャシャーン”だった!互いの存亡を賭けた壮絶な戦いが今始まる!!

いきなり結論からいきますが、色々と文句はありつつもトータルで楽しめた「GOEMON」に比べて、この「CASSHERN」は頂けません。なぜこんなクドい映画にしてしまったのでしょうか。141分間に渡る登場人物達の演説合戦や、 意味ありげなイメージ映像群に心底ウンザリしました。後半30分は「いい加減にしろやコラ!!」と怒りが湧いたほど。紀里谷ワールド支持派な私ですが今作は容認できません。

「愛し合わなければ生きることは争いになってしまう」。これは10年以上前にTV朝日で放送されていた深夜番組、「金髪先生」にてドリアン助川が語った言葉で、「CASSHERN」も全く同じテーマを描いているわけですが、それをクドクドと説教クサく語り倒した今作よりも、ドリアン助川の一発の方がストレートに胸に響きます(*ちなみにこの言葉はBON JOVIの名曲「LIVI'N ON A PRAYER」の歌詞解説中に語られました)

おそらく今作の問題点は、紀里谷監督が頭の中に浮かんだモノをすべて詰め込んでしまった点にあると思います。彼はおそらく想像力が豊かな方でしょうから、言葉や映像のイメージが湯水のように湧いたのでしょう。初の劇場公開作品ということで相当に意気込んだんだと思います。だからその全てをスクリーンに焼きつけるべく頑張った。しかし、どんなに美味しい料理も満腹以上は食べられないように、もう十分に伝わっていることを延々と見せられ続けるのは苦痛でしかありません。

しかも、その伝え方が説教クサい演説とヘンテコなイメージ映像の連打という構成。これではどんなに正論を熱く語られようとも「うん、もう言いたいことは解りましたので、さっさとこの映画終わらせてくれませんかね?」という冷めた気分になってしまいます。

つまり今作は、紀里谷的な美意識で彩ったスタイリッシュなイメージとは裏腹に余計な贅肉がたくさんついた映画だと言えます。主張されるメッセージが真っ当で共感的なだけに、残念でなりません。

ちなみに紀里谷監督は今作をさしてデビット・リンチ的表現と語っていますが、ラカン的な意味での現実界にアプローチするような雰囲気を楽しめるリンチの映像表現と比べるまでもなくショボイです。この発言は彼の黒歴史として後世に語り継がれると思います。

*以下、ネタバレ含む

あと、山海塾や白虎社的な暗黒舞踏風味の新造人間達のアーティスティックなイメージ映像も中途半端でしたね。あーいう人体表現を雰囲気でなぞられると非常に寒いです。いつ「宮ゃ迫ぉ~です!!」って言いだすかハラハラしましたよ。やるならもっと精神的な崇高さまで突き詰めてガチンコでやりきってほしいです。

アクションについては「GOEMON」でも不自然だったので期待してませんでしたが、GOEMON以上にダメでしたね。これだけ見た目の美意識に拘る人が、なぜこんなにも動きのセンスが悪いのか?動きはカクカクでポーズも今一つキマらない。特に「vs佐田真由美」や、「vs要潤」なんかは役者が可哀想で観ていられませんでした。これも黒歴史入り決定です。

カメラワークもいまひとつ子供っぽくて。やたらグアーッ!と引いてロングショットになったり、逆にギュイィーン!とズームインしたりと、とにかくダイナミックに動かすんですが、動かしてりゃ躍動感が出るってもんじゃないですよ。(*ここはGOEMONでは結構マシになっていたのでひと安心です。)

最後に音楽ですが、これは本当にうるさかった。これもGOEMONはだいぶマシになってましたが、キャシャーンはヒドイ。いくらなんでもってぐらい音楽が鳴りっぱなしで頭が痛くなりました。

褒めポイントも少し挙げると、及川光博扮する内藤薫が登場するシーンは良かったです。特にクーデターが起きた席上の吹き出し笑いは抜群でした。ミッチーのちょっと微妙な演技はクセになりますね。どの作品で観ても彼の演技は不思議と心に引っかかってきます。もしかして私はミッチーファンかもしれません。

ということで、観賞中いろいろと苦しめられ、途中「フザケんな!」ぐらいの想いもしたわけですが、なぜか紀里谷映画を嫌いになれない私がいます。やっぱり彼の独創的な美意識に裏打ちされた不思議な魅力は間違いないし。どうしても期待してしまう。次回作が公開されれば必ず観に行くと思います。だから紀里谷さん、どんどん突き進んでください!応援してます!

「CASSHERN / キャシャーン」
公開:2004年4月24日
配給:松竹
監督:紀里谷和明
脚本:紀里谷和明、菅正太郎、佐藤大
出演:伊勢谷友介、麻生久美子、唐沢寿明、寺尾聰、樋口可南子、小日向文世、宮迫博之、佐田真由美、要潤、西島秀俊、及川光博、森口瑤子、鶴田真由、寺島進、玉山鉄二、りょう、大滝秀治、三橋達也主題歌:宇多田ヒカル「誰かの願いが叶うころ」
製作費:6億円
興行収入:15.3億円
上映時間:141分