バーレスク - 90点 ◎

新旧2大ディーバが起こすミラクル!歌声の圧倒的説得力に感動!

<作品紹介>世界レベルの人気を誇るアーティスト、クリスティーナ・アギレラが、初めて演技に挑戦した映画「バーレスク」。共演には「ふたりにクギづけ」以来約7年ぶりの映画出演となるシェールほか、「プラダを着た悪魔」のスタンリー・トゥッチ、TVドラマ「ヴェロニカ・マーズ」のクリスティン・ベルなどが名を連ねる。そして、時代を超えてバーレスクの世界を再現するのは、実際にバーレスクショーの脚本を書いた経験を持つスティーブ・アンティン監督。

<あらすじ>片道切符を握りしめ、歌手になる夢を追いかけてロサンゼルスに来たアリ(クリスティーナ・アギレラ)。そこで彼女の心を奪ったのは、経営難に喘ぎながらも歌手兼オーナーのテス(シェール)が手がけるゴージャスなショーで毎夜観客を魅了するクラブ「バーレスク」だった。ここで働きたいと願うアリを最初は認めなかったテスだが、アリの情熱に負けダンサーとしてステージに立たせる。そしてある夜、ステージで起きた音響トラブルを奇跡のアカペラで乗り切ったアリはバーレスク・クラブの看板スターにのし上がっていく。かくして活況となるバーレスクだったが、借金の返済が滞っており立退きの期限が迫っていた。そんな時、アリは大物エージェントのマーカスから引き抜きの誘いを受ける。クラブの危機を救うのか?己の夢をさらにステップアップさせるのか?帰路に起たされたアリの選んだ道とは―。

この手の絢爛豪華なキャバレー映画は「ショーガール(1995)」、「ムーラン・ルージュ(2001)」、「シカゴ(2002)」などを観てきましたが、今作「バーレスク」がブッちぎりのナンバー・ワンですね。クリスティーナ・アギレラ、そしてシェールと本物のパフォーマーを主役に迎えたアドバンテージを最大限に生かし、その圧倒的な存在感で劇を盛り上げてくれるので、爽快な気分で劇場を後にすることができました。ここ最近しみったれた映画が多かったのでホント嬉しいです。

予告編をご覧になればわかるとおり、今作最大の見所は新旧2大ディーバが繰り広げるクラブ・バーレスクでのゴージャスなショーですが、実際のところホントに素晴らしかったです。美しい色彩が飛び交う豪華なステージ、煌びやかな衣装、妖艶なメイク、力強いダンス、そして神懸かった歌声。激しい曲から、美しいバラードまで、問答無用でエモーションの嵐が押し寄せます。特に印象的だったのが、リップシンクが基本のバーレスクがアリの歌声によってドラマチックなライブショーに生まれ変わる「Express」と、クラブ存亡の危機に陥ったテスが再起する「You Haven't Seen The Last Of Me」(私はここで泣いた)、あとラストシーンのド派手なショーで流れる「Show Me How You Burlesque」。ホントこの映画の音楽は最高でした。

役者の演技もみんな素晴らしくて、サプライズは演技初挑戦のクリスティーナ・アギレラですよね。ショーでのパフォーマンスは文句なく神懸かってたし、これが初めてだなんて信じられないほど演技も上手くて、表情一発とってみてもホントに豊か。喜怒哀楽いろんな場面で関心させられました。この人は正真正銘の表現者ですね。あと見た目に関しても「可愛い・美しい・セクシー」と色々楽しめてホント幸せ。私はこの映画で彼女の虜になってしまいました。

一方のシェール師匠も半端ないです。まずあの美しさは奇跡としか言いようがありません。64歳であのミニスカート、あのハイレグを着こなせる人は滅多にいない。マドンナのレオタードどころの騒ぎじゃないですよホント。シェール師匠の美に対する姿勢とその実践に心底感動してしまいました。無論、貫録たっぷりなテス演技も完璧で、感服いたしました。ちなみな話、日本女優でいうと夏木マリ(58歳)、萬田久子(52歳)的なラインが近いと思いますが、彼女らも目指せシェールですよ。絶対イケます。

あと「プラダを着た悪魔」でアン・ハサウェイを「Size Six!」と呼んでいたスタンリー・トゥッチ(舞台監督でテスのパートナーのショーン役)も超イイ味出してたし。アリのボーイフレンドのジャックのお人好しキャラも最高だったねー。こんだけ起ったキャラクターが出てくるんだからつまんねーわけねースわホント。

さらにそれだけに終わらないのが「バーレスク」のスゴイところ。実は物語の内容もイイ。夢見る女性のサクセスストーリーを骨子に、ジャックとの微笑ましいラブ・ストーリーや、テスとの疑似的な母娘関係、世代間闘争などを絡めることによって、ともすれば「ただ楽しいだけで中身は薄い」と評されがちなミュージカル映画の水準から一段上の、エンタテインメントに仕上げてあると思います。

実はこの映画については、ショーの楽しさよりも物語の素晴らしさを語りたい。

*以下、ちょっとネタバレ

まず、サクセスストーリーですが、ここのカタルシスの与え方が実に巧妙。田舎でのオープニングでアリの圧倒的パフォーマンスをみせつけて観客の心を鷲掴みにしておいて、一旦テスやショーンらに彼女を見下させて、なかなかパフォーマンスをさせない。で、観客のストレスをイイ感じに淀ませておき、「もう我慢ならん!」となった頃合いに奇跡のステージぶちかます!という構成で、観客は「キターーーー!!」式の極上カタルシスを味わうことができます。素晴らしいやり口ですね。

ラブ・ストーリーは一見地味なんだけど、逆にそれがイイ。今作はショーの派手さやセクシーさが激しいので、あまり劇的でロマンチックな方向にふられたら食傷しちゃうので、ホッとするような素朴な感じがイイ具合でした。てか相手役のジャックがお人好しのホントいい奴なので、コイツには幸せになってもらわなきゃ困るって祈りましたよ。お約束のひと波乱もちゃんとやってくれてますし、この恋愛描写はGOODです。

アリとテスの疑似母娘関係もグッときちゃいますね。バーレスクにおけるテスはダンサー全員のお母さん的な感じで、妊娠して不安になってるダンサーを抱きしめて元気づけてあげたり、迷惑かけまくって出てったニッキー(アリのライバル)が戻ってきた時も何も言わず「おかえり」と言ってあげたりと、厳しいながらも優しい。私は家族関係が希薄な家庭に育ったので、こういうの見せられるとそれだけで泣けてきちゃうんだよね。

で、最後に世代間闘争問題。これが実は「フラガール」の娘(蒼井優)と母(富司純子)の関係図式に近い。エネルギーショックの時代に、終わりゆく産業である炭鉱(≒過去の因習≒自分のアイデンティティー)にしがみつく母は、フラダンスなんてチャラチャラした仕事をする娘が許せなくて勘当してしまうのですが、娘宛に届いた小包を渡すために立ち寄ったレッスン場で、一人黙々と汗を流しながら一生懸命練習するわが娘の姿(≒未来への希望)を見て感動するんですよね。で、娘の為にある行動をとる(例の号泣シーン「ストーブ貸してくんちぇ!」ですよ!みなさん!(笑)

アリとテスもこれに近くて、ようは新世代が旧世代を”感動させること”無くてして、世代間闘争の終結はありえないのだ!という重要な学びを得ることができるんです。

今作ではアリが何か言おうとすると悉(ことごと)くテスが「黙らっしゃい!」的な感じで口を塞いでしまう。歌に自信があるアリは口パクが基本だったバーレスクのリップシンクショーよりも生声で歌うライブショーの方が観客が増えると思っていて、それを進言するんだけれども、テスは「客はダンスを観に来てるのよ!」と旧態依然とした態度でそれを許さない。もしかしたらその古いやり方が経営難を招いたかもしれないのに・・・。

で、ある音響アクシデントが起きた夜に、アリのアカペラが奇跡的にそれを救う、それと同時にテスの脳裏にバーレスク再起のイメージを鮮烈に刻みつける。ここがまさにアリがテスを感動させた瞬間で、ドラマが急激に加速する引き金になるんだけど、アリのサクセスと世代間闘争の融和が同時に起こる素晴らしいカタルシスになってるんだよね。いや~深いよバーレスク。この映画はホント派手で楽しいだけじゃなくて、色々と歯ごたえがある映画ですよ。

という感じで、言葉の限り褒めまくってきたのですが・・・最後にちょっと文句も言っておきたい。

まず、中盤の随所で劇展開がもたつく。これはダメですよ。ショーのシーンが素晴しいのは間違いないのですが、今作には経営難や恋愛、アリのサクセスなど、進めなきゃいけない件がいくつかあるのに、中盤以降「桃鉄」の”牛歩カード”を使われたかの如く劇展開が鈍重になっていって、しばらくショーばかりが流されてしまう。全部ではないけれど2~3曲分ぐらいの間ドラマの進捗が完全に止まった状態なので、飽きちゃう人が出てきてもおかしくない。(私的にはそろそろ話し進めてくれないかな・・・、ぐらいの時にグッとくる曲がきたりして気分が戻ったりしたのですが)

あと、諸問題の解決にご都合主義が多い。ま、この映画は他の要素が最高なので「そういうのどーでもいーから!!」っていう気分であることは間違いないのですが、そういう部分も完璧にしてくれてたらチビッちゃうぐらい傑作になったかと思うとちょっと悔しいです。だから−10点です。

ということで褒めてるだけだと恥ずかしいので、最後にちょろっと文句も言いましたが、トータル私は感動しまくりの幸せな時間を過ごせました。ということでこの映画は超オススメです!

&長文読んでくれてありがとう(^^

P.S. 日本の公開日12月18日は主演のクリスティーナ・アギレラの誕生日なんだってね。おめでとう。

「バーレスク」
公開:2010年12月18日(土)
配給:S.P.E
監督:スティーヴ・アンティン
脚本:スティーヴ・アンティン
出演:クリスティーナ・アギレラ、シェール、クリスティン・ベル、キャム・ギガンデット、スタンリー・トゥッチ、エリック・デイン、アラン・カミング、ジュリアン・ハフ
上映時間:120分