インシテミル 7日間のデス・ゲーム - 30点 ✕

作品世界の設定に、やっちゃいけないルール違反あり!

<作品紹介&あらすじ>「リング」シリーズを手がけた中田秀夫監督が、米澤穂信のベストセラー小説を映画化した心理サスペンス。時給11万2千円という求人広告に釣られた10人の男女が「暗鬼館」に集められ、24時間監視されながら7日間の共同生活をすることになった。タイムアップまで何も起きなければ全員が大金を手にできる簡単な仕事だったはずだが、二日目に死者が出たことにより事態は急転してしまう・・・。

映画「インシテミル~7日間のデス・ゲーム~」を簡単に説明すると、疑心暗鬼や騙し合いのゲームを通じて人間の本性を炙り出し、究極的には性善説や性悪説(またはそのあやふやな中間地点)に着地させるという「カイジ」や「ライアー・ゲーム」的な系統のお話ですが、序盤の展開にどうしても納得できないポイントがありまして、それがずっと心に引っかかってしまい映画を素直に楽しむことができませんでした。

*以下、ネタバレあり

ゲーム開始の夜、参加メンバーは自分の個室に凶器が置いてあるのに気付き、二日目に起きた殺人が銃殺だったことから「一体誰が殺したのか?銃を持っているのは誰なのか?」という疑心暗鬼ゲームを始めてしまうわけですが、この展開には短絡的な印象を受けました。暗鬼館にやってきた最初の段階で運営側からこの怪しい実験について”夜10時以降は自分の個室から外に出たら監視ロボットに排除される”というルールを説明されているわけですから、朝起きて通路で死んでる人間がいたら真っ先にそのロボットを疑うのが普通ではないでしょうか?しかしこの登場人物達は誰一人そこを指摘せず、運営側に都合の良いようにバトルロワイヤルを始めてしまう。この展開に初っ端からズッコけてしまいまいた。

一応、一人目の犠牲者である石井正則が実は運営体側の人間で、「○○は××の殺人犯に似てる」とか、「○○は××の通り魔に似てる」という噂を吹聴し、参加者間の疑心暗鬼を煽り、しかも自分の死をもって生き残りゲームの引金を弾くという筋書きなので、ある程度の説得力はあるわけですが、それでもロボットが犯人である可能性を誰一人として疑わないないのはありえません。しかも驚くべきことに、最終的には本当にそれがこのロボットの仕業で、終盤に”仰天の事実”として明されるものだから、「えっ!やっぱそうなの?」と再びズッコけてしまいまいた。

さらに、劇中で起きるサスペンス状況(特にクライマックス)にもズッコ要素があります。参加者がどんどん死んで、誰が殺人犯だかわからない極度の緊張状態の中、メンバーの誰が入れたかもわからないお茶を飲むヤツなんていますかね?しかも案の定お茶には薬が入ってて大ピンチに陥っちゃうって、この人たちはどれだけウカツなのでしょうか?

もっと言ってしまうと、そもそもこの怪し過ぎるバイトの参加者はもっと金に困窮して切羽詰まった人間にしないとヘンですよね。急落した株を抱えて切羽詰まった青年がちょろっと描かれていますが、それ以外のメンバーは全然普通のパンピーです。ちょっと貧乏なぐらいの普通の人間がこんな怪しすぎるバイトに参加するのはおかしいので、人物設定をもっと煮詰めて参加する動機に説得力を備えてほしかったです。

あと映画的なつくりの面ももういっちょ質を上げてほしいところですね。感情を煽る音楽をかぶせたり、藤原竜也くんを泣きわめかせたりして劇を盛り上げようと頑張ってはいるのですが、編集がいまいちだからか全体のテンポ感がわるく、時間経過の長さを感じてしまいました。

とどめは最後のオチ(このゲームの正体)で、これが本当に酷かった。

命を賭けたゲームを世界中に生中継で有料配信して、徴収されたそのお金を参加者への賞金と運営費に当てるなんて商売は、法治国家で成立するはずがありません。いくらフィクションとはいえこの設定は非現実的すぎて飲み込めませんでした。

「カイジ」や「ライアー・ゲーム」も十分非現実的ですが、彼らが賭けているのはあくまでもお金であり、「借金地獄≒身の破滅」に陥ったとしても命までは奪われません。故にどんだけ非現実的であっても作品内のリアリティは担保され、話に乗ることができます。でもこの映画の制作者達は、自分達の都合の良いように世界を捻じ曲げ「だってそういうのが成立してる世界の話だから!」と開き直って衆人環視の中で血みどろの殺し合いのゲームをしてしまう。こんな設定は反則です。あんなビジネスがまかり通る世界なら、いわゆる普通の(=我々観客が現実として生きている)一般生活を送れる社会なんか構成されませんよ。こういう適当な環境設定をされると世界の成り立ちに根本的な矛盾が生まれてしまうので一気に白けます。残念ですね。

あと最後の藤原竜也の行動もなんか中途半端でしたね。世界のエグさと人間の希望みたいなものを同時に表現したかったのでしょうが・・・前述の通り足元がグラグラなので、たんに寒い印象になってしまいました。

ということで映画「インシテミル~7日間のデス・ゲーム~」。さんざん文句を言いましたが、藤原竜也とか綾瀬はるかとか石原さとみとか俺の好きな役者さんが出てるし、彼らの演技を眺めてるだけでも楽しかったっちゃ楽しかった映画なので、一度観賞なさってみてはいかがでしょうか。

P.S.
武田真治の”ジョーカー的”な演技は惜しかったですね。”高笑い”がちょっとやり過ぎで、非常にもったいない気がしました(これは演出家の責任です)。彼はスゴイ好きな俳優なのでもっと沢山の作品で観たいです。

「インシテミル 7日間のデス・ゲーム」
公開:2010年10月16日
配給:ワーナー・ブラザース映画
監督:中田秀夫
脚本:鈴木智
出演:藤原竜也、綾瀬はるか、石原さとみ、阿部力、平山あや、石井正則、大野拓朗、武田真治、片平なぎさ、北大路欣也、チョー