南極料理人 - 45点 △

起承転結の”起”すら起きないけど、なんかオッケイな映画

<作品紹介>南極観測隊に料理人として参加した西村淳のエッセー「面白南極料理人」の映画化。主演は「ゴールデンスランバー」の堺雅人。共演には生瀬勝久、高良健吾ら新旧実力派俳優たち。妻(西田尚美)と娘を置いての単身赴任。行き先は陸の孤島、南極ドームふじ基地。食材管理および料理人として派遣された男・西村(堺雅人)は、調査とは関係のない任務を淡々とこなす日々を送っていたが・・・。

ということで「南極料理人」を観たわけですが、この料理映画は、料理の扱い方が非常に特徴的ですね。なんというか、料理に負わせる役割がめちゃくちゃユルい(軽い?)です。

映画に限らず料理を題材にした作品というものは、料理が人を感動させたり、その人生をも救ったりする内容が多いわけですが、この「南極料理人」にそういう展開はありません。普段私たちが何気なく行っている日常生活と同じレベルで、南極に単身赴任した野暮ったい男たちがクチャクチャと飯を食ってクソして寝る。そんな有様が延々と描写されてゆきます。

起承転結でいう”起”すら起きず、極限状況下の生活描写(=一番面白くなりそうな部分)もディテールに踏み込まず、ささいな波乱や事件が起きては収束し、腹が減ったら飯を食う。このマッタリループを何周かしたのち、序盤の贅沢料理が徐々に家庭料理に変化するのを象徴にして、男たちの共同生活が疑似家族的なナニと昇華する様子が描かれるわけですが、特にそれが何らかの示唆や深い感慨を揺り起すでもなくシュワワワヮ~ン・・・っと飛散していきます。

なんとなくの先入観でホッコリとした感動を呼ぶドラマを期待しながら鑑賞していた私からすると、その変哲のなさに「んんん?なにこれ?」と肩透かしを食ったような観賞後感に陥ったのですが、それはそれでわるくない印象を抱きました。

個人的には「美味しんぼ」的な食材・調理方法のウンチク・トリビア合戦や、「ミスター味っ子」的なエンタテインメント演出(味王の美味いぞーーーっ!とかw)、はたまた「タンポポ」的なエロス(口移しで生卵レロレロ、血の入ったカキ貝ジュルジュル)表現など、なにかしらの感情を揺さぶるポイントがほしかったわけですが、生きていく上で必ず必要な食事という行為のリアリティを、フレームアップせず過不足ない位置づけで描いた勇気ある怪作であると評価させて頂きたいです。

「南極料理人」
公開:2009年8月8日
配給:東京テアトル
監督:沖田修一
脚本:沖田修一
出演:堺雅人、生瀬勝久、きたろう、高良健吾、豊原功補、
上映時間:125分
主題歌:ユニコーン「サラウンド」