怪盗グルーの月泥棒 - 45点 △

楽しいけど、ここまで"なんでもアリ"だとワクワク感が失われます。

<作品紹介>「アイス・エイジ」のプロデューサーであるクリス・メレダンドリが、米ユニバーサル・スタジオとタッグを組んだ3Dアトラクション映画。郊外の閑静な住宅街、一見なんてことのない家に住むのは、人類史上最高の泥棒を目指す怪盗グルーと仲間のミニオンたち。地下室には最先端技術を駆使した秘密基地があり、日々泥棒計画を企てていた。彼らの次なる狙いは月泥棒。その実現のために何でも小さくできる銃を手に入れロケットを作ることになるが、作戦実行しようとした矢先にとんでもない大問題が発生!!果たしてグルーはお月様を盗めるのだろうか!?

ここ数カ月の間に「トイ・ストーリー3」、「ヒックとドラゴン」とCGアニメの3D映画を立て続けに観てますが、3D映画としての楽しさはこの「怪盗グルーの月泥棒」が一番かもしれません。まさにアトラクションムービーという趣向でサービス満点。劇中のいたるところに施した3D演出で観客を楽しませてくれます。3Dメガネをかけていることを気にさせるような時間は全くありませんでした。非常に素晴らしいと思います。

世界観やキャラクターのデザインも非常に良く。おもちゃ箱から飛び出してきたようなカラフルな世界の中で、3姉妹やミニオン達がヒョコヒョコ動くだけで楽しかったですし、なにより可愛かったです。ストーリーもシンプルで、月の奪い合いと、主人公の孤独な魂がピュアな子供たちによって救われるという物語の二本柱で構成され、子供にも分かりやすい内容になっています。

*以下、ネタバレ含む

しかし、「怪盗グルーの月泥棒」は、「トイ・ストーリー3」や「ヒックとドラゴン」のような責任感は持ち合せていません。まさに子供が考えたような内容で、フィクションにルールは一切無用と言わんばかりに何でもアリのハチャメチャな展開をしてしまう。そこにはピクサーやドリームワークスが作る作品のような良く練られた脚本やテーマ的な深みはありません。そういうモノを期待すると確実に肩透かしを食らいますので注意が必要です。ちなみに私はただ賑やかなドタバタ劇を眺めているだけで満足できるような人間ではないですし、例に挙げた2作品と比較するような視座で観てしまったため、今作への評価はあまり高くありません。

例えばサッカーというスポーツは手を使ってはいけないというルール(≒制限)があり、それを観客が共有しているからこそ、選手達の足技や連携プレーに魅了されるわけですが、この作品世界にはそういったルール設定が一切なく、グルーやそのライバルであるベクターの限界値(=何ができて何ができないのか?)がわからないため、どんな攻防戦が繰り広げられようともワクワクすることができません。何かしらの危機的な状況が起きても、それを解決するアイテムをポケットからポンッと出してすぐ解決といった都合の良さで、ただハチャメチャなイメージの応酬が眼前に広がるのみ。こういうのは子供向けとは言いません。子供ダマしという言葉が適当です。(ま、気持よくダマされて楽しければそれでイイんですが、私はダメでした)

あと、グルーの孤独な魂が子供たちによって救済される件にも一言あります。というかこれは「もっとこうしたら感動的だったじゃん!」という提言なのですが、モロモロ終わった後のグルーの反省描写はもう少し深堀りしても良かったんじゃないでしょうか?

グルーは排気ガスを大量にまき散らす車でファーストフード店に乗りつけ、並んでる人達全員を凍らせ銃で固めて割り込みし、さらに金を払わずにマフインとコーヒーを泥棒するような悪いヤツです。おそらくこういう悪さは日常茶飯事でしょう。そんなヤツが孤児院から(最初は利用する目的で)引き取った可愛い3姉妹との共同生活を通じて会心し、良いお父さんになっていく。この展開は感動的でイイのですが、会心したのなら今までかけた迷惑のオトシマエをつけるべきです。

というかこういう話はエンディングで「会心したグルーは町のみんなに役立つ発明品を作る人気者になり、3姉妹と一緒に末長く幸せに暮らしましたとさ・・・」的なヤツをみせるのがお約束だと思うのですが、なぜやってくれなかったのでしょうかね。それがあれば感動的な大団円エンディングになったと思うので非常に口惜しいです。

という具合に、理屈で物をみてしまう私には今一つ乗りきれない作品ではありましたが、前述したような良いポイントも沢山ある映画なので観て損はない映画だと思います。というか子供を連れて家族みんなで劇場に出かけるなら今はコレでしょ!!

「怪盗グルーの月泥棒」
公開:2010年10月29日
配給:東宝東和
監督:ピエール・コフィン、クリス・ルノー
脚本:シンコ・ポール、ケン・ダウリオ
出演:スティーヴ・カレル
上映時間:95分