雷桜 - 44点 △

ここが○○だったら、もっと感動できたのに!な点が多い

<あらすじ>宇江佐真理の原作を、時代劇初挑戦の岡田将生と蒼井優の主演で映画化。監督は「ヴァイブレータ」「やわらかい生活」の廣木隆一。母の愛を知らずに育ち、その情緒不安定な振る舞から老中や家来達に疎まている将軍家の十七男・清水斉道(しみずなりみち:岡田将生)。瀬田村の山で生まれ育ち、村人達から「天狗」と恐れられている娘・雷(らい:蒼井優)。そんな二人は、割れた銀杏の木から桜が芽吹いた奇妙な巨木・雷桜(らいおう)の下で出会い、運命の恋に堕ちるが、この身分違いの恋は悲劇の道を辿っていく・・・

身分違いの恋と山で暮らすヒロインの秘密という二本柱で劇を盛り上げる構造、主演二人の演技、美しいロケーション、ロマンチックで感動的な二人の交流シーンなど、良い面が沢山ある映画なのですが、映画的なつくり(カメラワークや編集など)があまり私好みではなかったのと、劇中の色々なところで「もっとこうした方が面白いのにー!」というアイデアが浮かんでしまって、素直に感動することができませんでした。

*以下、ネタバレ含む

まず、冒頭の斉道と雷の戦いですが、なぜいきなり二人を戦わせてしまったのでしょうかね。生死を賭けた戦いの中で二人の心が通じ合った!的な迫力があれば、また違った意味で納得できましたが、ここでこんな風に二人が戦ってしまうと、その後の「もののけ姫」的な介抱シーンが納得できないんですよね。

いくら一目惚れしたからといって、ついさっきまで真剣を振り回して自分を襲ってきてた相手に対してこの態度の豹変はいくらなんでもおかしいです。ここまでファンタジー色の強い展開は私には飲み込めない。というか、斉道が山賊に襲われてるとかでいいじゃないですか。それを雷が助太刀して、山賊を追っ払った後に斉道が気絶。で雷が優しく介抱してあげる、という流れだったらもっと素直に感動できたと思います。しかも、そうすることによって斉道が渇望していた”母性”の表現にもなるので、その後の展開に深みが増します。

あと、せっかく野生育ちの雷(本名:優)が産みの親の元(=都会)で暮らすという展開があるのだから、カルチャーギャップの違いで笑わせるコメディーリリーフを少しは入れても良かったんじゃないでしょうか。”都会では生活が上手くいかない”という描写があってこそ、そのあと優が「やっぱり山がいい」っていう心情に至るのに説得力が出るわけだし。そこに少しだけクスッとくる上品なコメディが入っていれば、一石二鳥で映画の魅力が増したと思います。

チャンバラシーンももっと気合い入れるべきでした。池畑慎之介(ピーター)さんが優の育ての親である時任三郎の胸に剣を突き立てて殺すシーンがあるのですが、抜いた剣がキレイなままなのは頂けません。あれだけピーターさんが気合いの入った演技をしてくれたのにこれでは台無しです。他のシーンでは血飛沫のCGをチョロッと入れたりしてるぶん中途半端でした。

さらに言うと、こういうアクションシーンにはもっと活劇的な魅力がほしいです。チャンチャンバラバラやってる風ではあるのですがどこか躍動感に欠ける印象で、今一つグッときませんでした。宮崎駿オマージュをやるならもっと活劇的な魅力を盛り込んでほしかったですね。(宮崎駿は活劇表現の天才なので)

最後にもう1つ。優に別れを言いに来た斉道が「やっぱ優と一緒にいたい!」とかなって駆け落ちをしようと決めた夜があるのですが、ここは180度変えてほしいですね。この夜に二人は愛を確かめ合うわけですが、このシーンのちょっと前に殺し合っている里の人間に対して優が叫ぶじゃないですか?「なんで里の人間は争い合うんだ!」って。だったらあの夜は「一緒に駆け落ちしよう」 じゃなくて、優が別れを受け入れた上で、「立派なお殿様になって平和な世の中にしてくれ」って言って、「でも・・・せめて今夜だけは一緒に・・・」っていう展開になっていたら俺は120%号泣してます。

しかも、そういう展開にした上で、ラストの18年後のアレを観たら「えっ!?マジか!?あの日のアレでそっかぁーホント良かったなぁーっ!!」とかいって超感動して劇場を後にできたと思います。もう監督のバカ!!

・・・っていうのは、あくまで僕の個人的な意見でして。後方にいた女性2人組みは鼻をグスングスンいわせて泣いていましたし、周りの女性はみんな一様に感動してる様子だったので、「雷桜」っていい映画なんだと思います。

「雷桜」
公開:2010年10月22日
配給:東宝
監督:廣木隆一
脚本:田中幸子、加藤正人
出演:岡田将生、蒼井 優、小出恵介、柄本明、時任三郎
上映時間:133分