突入せよ!あさま山荘事件 - 30点 ✕

一風変わった英雄譚。でも減点ポイント多すぎ

負傷者24名、殉職者2名、民間犠牲者1名を出した「あさま山荘事件」を、警察サイドの視点で描き上げた群像ドラマ。監督・脚色は「狗神」の原田眞人。原作は佐々淳行によるノンフィクション『連合赤軍『あさま山荘』事件』。主演は役所広司。

1972年2月19日、警察に追われた連合赤軍のメンバー5人が長野県軽井沢町にある“あさま山荘”に侵入、管理人の妻を人質に立てこもった。山荘は雪と氷に閉ざされ、外はマイナス10度を超えるという極限状況の中、人質と大量の武器を抱えた犯人を相手に警察は苦戦を強いられるが、現場のNo.2として警視庁から派遣された佐々淳行(役所広司)は、反目する地元警察と警視庁お偉方との間で板挟みになりながらも、事件解決に向けて奔走していた・・・。

「金融腐蝕列島-呪縛-」や「クライマーズ・ハイ」で、超ハイテンションな”男達の怒号”をスクリーンに叩きつけた原田眞人監督が「あさま山荘事件」を描いくということで(といってもこの2作品よりも前ですが)、とても楽しみにしていたのですが、結論から言うと、私的には不発な作品でした。

私が観た原田監督の上記2作品は両方ともいわゆる”内幕モノ”でして、「金融~」では腐敗した銀行を再生する若手の勇姿を描き、「クライマ~」では事件を追う新聞記者の執念を描いた作品で、両作品とも火花を散らしながら激突する男達の姿に燃えまくり(萌えまくり?)ました。

そして今回描かれるのは歴史的大事件に立ち向かった警察の男達。これはさぞ熱い男達の”怒号”が聞けるんだろうなぁとワクワクしながらDVDをプレイヤーにディスクを突っ込みましたが、蓋を開けてみれば全くもって期待外れで、妙にコメディタッチな演出の多い、中途半端な三谷幸喜作品のような仕上がりになっていました。

何といってもダメなのは、中央(警視庁)と地元県警、そして中央から派遣された主人公という三つ巴のバトルを、例の(というか僕が好きな)原田節に仕上げてくれなかったことです。そこに描かれているのは面白味のないセクショナリズムばかりで、全然心が燃えませんし、特段の新鮮味もありませんでした。

さらに最も楽しみにしていた”怒号”も不発。今作における怒号は、混乱した事件現場で飛び交うソレに相当すると思いますが、いくらなんでも大勢が一度に喋り過ぎてて訳がわからないし、注意深く聞いても何を言っているか全然聴き取れなので、なんかもう「うるせーなコイツら!w」と思ってしまいました。仮にこれが事件当時のリアルなのだとしても、映画的には退屈です。

このように、僕が勝手に期待した原田節が不発だったため、劇の多くを占めるコメディー要素は全く楽しめず、むしろ鼻についてきます。しかもこの映画は音楽がホント奇妙で、「パンパカパーン」みたいな間抜けなラッパの音が鳴る度にズッこけてしまいました。劇中のコメディに”うんこ”のくだりがありますが、そこにインスパイアされてこの映画を例えるならば、”カレー味のうんこを食わされているような”嫌な味のある映画だと思います。

ま、警視庁長官(藤田まこと)が無理やり役所広司を”ヘラクレス視”して、最終的に役所がそれを受け入れ、「さぁ明日からも頑張りまっしょい!」みたいになるちょっと変わった英雄譚的な劇の締め括り方は好きっちゃ好きだし、映画のつくりもそれなりにゴージャスなので「金返せ!」とまでは思いませんが、それ以外の減点ポイントが多すぎてトータル全然ダメ!というのが最終的な評価の落とし所だと思います。

P.S.
ちなみに、事件を片側からしか描いてないことからもわかるように、事件そのものを真摯に描いた映画ではありませんので、この事件に思い入れがある方が観たら怒ると思います。ご注意を。

*以下、少々ネタバレ

あと、役所広司が頭ン中「あ゙ぁーーっ!!」ってなってる時に、狂ったような指揮者のモノマネを結構な尺でやり続けるシーンがあるんですが、あの”珍シーン”だけは一見の価値ありです。

「突入せよ! あさま山荘事件」
公開:2002年5月11日
配給:アスミック・エース、東映
監督:原田眞人
脚本:原田眞人
出演:役所広司、宇崎竜童、天海祐希、伊武雅刀、藤田まこと、椎名桔平、上地雄輔
上映時間:130分