僕と妻の1778の物語 - 23点 X

題名のネタバレと、肝心な場面で水をさすSF演出にションボリ・・・

<作品紹介>フジテレビ系列で放映された草磲剛の「僕シリーズ」の最新作。SF作家の眉村卓と大腸ガンで逝去した夫人との感動の実話を基にしたストーリーを「笑の大学」の星護監督が映画化。仲むつまじい夫婦を演じるのは、「黄泉がえり」以来の再共演となる草磲剛と竹内結子。共演には谷原章介、吉瀬美智子、風吹ジュンなど。

<あらすじ>SF作家の朔太郎(さくたろう=草なぎ剛)と銀行員の妻・節子(せつこ=竹内結子)は、高校1年の夏休みに付き合い始めてからずっと一緒だった。だがある日、腹痛を訴えた節子が病院に入院し、彼女の体が大腸ガンに冒されていることが判明。余命一年であることが宣告されてしまう。途方に暮れる朔太郎だったが、医師(大杉漣)が話てくれた「笑うことで免疫力が上がりガン細胞が消滅するという説がある」という言葉を信じ、最愛の妻だけに向けて毎日原稿用紙3枚以上の短編小説を書くことにする。

愛する人のために自分のできるベストを尽くす―。それは素晴らしいことですよね。この映画の主人公もそうで、不器用ながらも妻を愛し、小説家である自分のやれること(=小説を書くこと)で、病気と闘う妻を元気づけるために毎日健気にがんばっていました。

私はこの手の感動話にはめっぽう弱いので、観賞にあたって「この映画は泣いてしまうかもしれない」と思い、ハンカチを用意して劇場に行きました。がしかし・・・残念なことに鑑賞中涙が頬をつたうことはありませんでした。こういった実話ベースの感動物語に注文をつけるのは非常に心苦しいのですが、完成度に不満を感じたのは事実なので、一つづつ指摘させて頂きます。

まず、「僕と妻の1778の物語」という題名からして大問題で、開幕早々のタイトルバックの時点で致命的なネタバレが発生しています。観客の多くは妻が死ぬという展開は事前に承知した上で観ているわけですが、そのタイムリミットまでは知りません。そこへきて”1778”という数字を出しちゃうのはマズイです。

劇中何度も「第○○○話」と書かれた原稿用紙を映し、最終話に向けてカウントアップしていくという演出がありますが、 その最終話が1778話であるということが題名のせいでバレてしまっているため、途中節子がいくら苦しんでも「まだ○○○話だし、ここでは死なないよな」と余計なことを考えてしまい、 シリアスな緊張を感じることができませんでした。

次に、主人公(朔太郎)が執筆するSF小説を再現したヘンテコリンなCG映像がミスマッチでした。前半の妻がガンだと判明する前の二人のささやかな幸せパートにおける、朔太郎が小説の着想の得るアヴァンギャルドなCG演出はまだしも、中盤以降、闘病生活が佳境に入ってからも同じヘンテコリンなノリを続けるので、せっかく心が感動しかけているのに冷水を浴びせられるような気持ちになりました。あろうことか今際の際にまでそのノリが貫かれるに至ってはもう発狂寸前で、泣けないどころか呆れてしまいました。

最後に、この内容で139分は長過ぎます。このお話は死期が迫った妻の傍で小説を書きながら添い遂げるという道筋意外に一切脱線しない(というかできない)ため、基本的には朔太郎が小説を書く → 妻が苦しむ → でも大丈夫、みたいなことの繰り返しを反復するだけなわけですが、1778話という終着点がわかってしまっている分、「まだ○○○話か・・・」とかったるく感じていしまいました。

さらにもっと突っ込めば、この物語は「妻のためにここまで頑張った男がいた」という1フレーズ以上にお話を膨らませようがないので(実話であることが最大のバリューなのでそれは御法度)、実はそもそも長編映画として1つの物語を紡ぐポテンシャルのない題材なのではないか?と思ってしまいました。(*「奇跡体験アンビリバボー」とかで取り上げるのに調度良いサイズなのだと思います)

*以下、ちょっとネタバレ

というような理由で、この作品が私の琴線に触れることはなかったのですが、良い部分もちゃんとありました。例えば単なる美談だけに着地させずに、実は小説を書く行為は朔太郎の心の安定のため(=妻のためというより自分のため)で、妻にとっては逆にそれが負担になってしまった面もあるという部分も真摯に描いていたし、そこを朔太郎が認める流れにはグッと来るものがありました。

あと、余命が一年であることを朔太郎が隠していることを察する竹内結子や、妻の衰弱(抱きかかえた体重が軽くなっている)を感じてショックを受ける草磲剛、節子がガンであることを聞いた朔太郎の親友・谷原章介の表情など、役者の演技が光る部分も結構ありましたし、節子が自分の体の変調を自覚することを表現したかのような台所の空瓶ごしに写された顔がグア~・・・と歪む撮り方の演出など、ところどころに良い所もあったんです。でも!・・・やはり上述したポイントの減点が大きすぎて、最終的には差し引き多くの不満が残る映画でした。

「僕と妻の1778の物語」
公開:2011年1月15日(土)
配給:東宝
監督:星護
脚本:半澤律子
出演:草磲剛、竹内結子、谷原章介、吉瀬美智子、陰山泰、小日向文世、浅野和之、佐々木すみ江、大杉漣、風吹ジュン
上映時間:139分